私はこれまで、「識学(しきがく)」という意識構造学を通して、多くの組織の問題を解決してきました。「識学」とは、組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どうすれば解決できるか、その方法を明らかにした学問です。
2022年12月時点で、約3000社の会社が識学を導入しています。また、2019年度に新規で上場した会社のうち7社が識学を導入しており、「いま、最も会社を成長させる組織論だ」と、口コミを中心に広がっています。
本書『リーダーの仮面』は、そんな識学のメソッドを元に、「若手リーダー」に向けてマネジメントのノウハウを伝えます。本書の内容は、人の上に立つ立場の人であれば、誰しもが気づきを得られるものになっています。(初出:2020年11月24日)
仲良くやると「平等性」が失われる
これまでのあなたは、職場の同期や後輩と仲良くやってきたと思います。
しかし、リーダーになり、部下ができると、仲良くやっていこうとする「感情」が邪魔をします。
すでにこれまで仲良くやってきてしまった人は、まず距離を置くことです。
世の中には、「フレンドリーな人がいい人である」という固定観念があります。
フレンドリーだと、表面上の恐怖が減るので快適になります。
しかし、成長に必要な恐怖も感じにくくなってしまうので、緊張感がなくなり、なあなあの関係になってしまいます。
また、リーダーは「平等性」を保たなくてはいけません。
リーダー側が平等に扱うことはもちろん、部下側からも「この組織は平等だ」と思ってもらうことが大切です。
人は他人と比べる生き物です。
「あの人だけ優遇されている」「同期の中であいつだけ特別扱いだ」という贔屓に、部下たちは敏感です。
だからこそ、上司と部下のあいだの距離を取る必要があるのです。自分から距離を取る上司でいるほうが、組織は伸びるし、最終的に部下も成長します。
「部下の成長」を
我慢強く待てるか?
優秀なプレーヤーは、他のプレーヤーが結果を出せないことに対して、理解が足りない場合があります。
しかし、結果が出るまでには「タイムラグ」があります。
リーダーが手を差し出せば、そのぶん部下の失敗は減るかもしれませんが、学ぶ機会を奪ってしまうことにもなります。
だから、リーダーは焦ってはいけません。
プレーヤーであれば、半期や1年間の目標達成に集中すべきですが、上の役職になればなるほど、長期的な視点も必要になります。
「結果が出るまでのあいだに、楽しそうにやっている会社やチームに部下が流れていってしまうのではないか」と心配するリーダーもいるでしょう。
それに関しては、「待て」と言うしかありません。
新卒で入社して、他部署がキャッキャと楽しそうに仕事をしているのを見て、「なんで自分の部署は盛り上がっていないんだろう」と思ってしまう人もいるでしょう。
しかし、リーダーはぐっと我慢です。
マネジメントは毎日継続していく必要がある長期戦です。
ダメなリーダーほど、待つことができません。
モチベーションが気になり、テコ入れをしてしまいます。
士気を上げて人を動かすやり方は、「麻薬」みたいなものです。最初は効果的でも、だんだん効かなくなっていく。そして、もっと強い刺激が必要になります。
しょっちゅう「暑気払い」のような、士気を上げるための飲み会が開かれる会社をよく見かけます。
しかし、回を重ねるごとに恒例行事になり、形骸化し、嫌々でも参加させられるという本末転倒なことになります。
長期的な視点を持ってください。そして、部下たちの成長を待ちましょう。
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。
2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。
2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。
人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2022年12月現在、約3000社の導入実績がある。
主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』(ダイヤモンド社)などがある。