職場いじめに遭った人の特徴を、性別、年齢、居住地、婚姻状況、教育歴、世帯収入、職位・業種・企業規模・勤務内容、うつ病の既往歴などの交絡因子を調整して解析。すると、以下の有意な関連因子が浮かび上がった。男性(該当者率が女性より+32%)、若年(65歳未満は65歳以上より+64~171%)、低収入(世帯収入600万円未満は1000万円以上より+16~82%)、経営者(アルバイトより+76%)、管理職(同+40%)、管理職以外の正社員(同+27%)、身体的負荷の増加(増加なしに比べて+40%)、心理的負荷の増加(同+21%)。その一方、パンデミック後に在宅勤務を開始した人は、職場いじめの該当者率が有意に低かった(-19%)。

 次に、職場いじめに遭遇したことと重度の精神的苦痛および希死念慮との関連を、前記と同様の交絡因子を調整して検討。すると、自分がいじめに遭った場合には、重度の精神的苦痛に該当する割合が184%、希死念慮を有する割合が113%、それぞれ有意に多いことが分かった。さらに自分が職場いじめに遭わなくても、その場面を目撃しただけで、同順に90%、41%、それぞれ該当者率が有意に高いことが示された。

 続いて、重度の精神的苦痛や希死念慮に関連する因子を性別に検討したところ、男性では、パンデミック後に在宅勤務を開始したことが、有意な関連因子の一つとして抽出された(重度の精神的苦痛は+20%、希死念慮は+23%)。女性ではこの関連は非有意だった。

 論文の考察の中で著者らは、本研究結果のうち注目すべき点として、女性より男性、非正規雇用者よりも正社員や管理職・経営者の方が、より多くの職場いじめに遭遇していた点を挙げている。これらは以前の研究報告にはあまり見られない結果であり、パンデミックにより状況が変化した可能性があるという。その背景として、「パンデミックに伴う勤務環境の変化への不満が、職位がより高い人に向けられた可能性があること、職位が高い人に女性よりも男性が多いことが影響しているのではないか」と推測している。

 結論は、「職場でのいじめやメンタルヘルスの問題を減らすには、以前から明らかになっていたリスク因子を有する労働者だけでなく、ハンデミックに伴う環境の変化の影響を受けている労働者にも焦点を当てる必要がある」とまとめられている。(HealthDay News 2022年12月5日)

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