中国・上海の封鎖された道路中国・上海の封鎖された道路 Photo:Jackal Pan/gettyimages

党大会から1カ月たっても、中国の強硬なゼロコロナ政策はまったく終わる気配がない。隔離施設から戻った女性が自殺、iPhone工場からの集団大脱走、いつまでたっても自宅に帰れない――メディアが沈黙する中で、突発的に起きた事件だけが目撃者によってネットを通して広がるという事態が続いている。「党大会までは締め付けが厳しくても仕方ない」と我慢していた人たちからも不満の声が上がっている。(フリーライター ふるまいよしこ)

新体制のナンバー2・李強は、上海ロックダウンを主導した人物

 中国共産党の第20次全国代表大会(以下、党大会)から約1カ月。前回の記事でお伝えした胡錦濤・前総書記の「強制退場」という前代未聞の事態の謎も明らかにならないまま、李強・上海市党委員会書記が、習近平に次ぐ党のナンバー2につくという数段階特進もいまだに大きな驚愕(きょうがく)をもって語られ続けている。

 政治局員にはなるだろうという予想はあったものの、よもや、今春の上海ロックダウンを主導した人物が堂々と習の真横に並ぶとは、ほとんどの人が思ってもいなかった。中国最大の経済都市上海のロックダウンの惨状を思い起こし、人びとの思いはかなり複雑である。

 東西の中国ウオッチャーたちは口々に、今回の政治局人事は徹底的に「習近平への忠誠」を柱にしたものだと分析している。つまり、あの国内外に衝撃と大混乱と全国的な経済不況をもたらしたロックダウンは、「習への忠誠」の証しだと見なされた、ということである。

 あれほど大規模で常識はずれなロックダウンを敢行した裏には、上海市政府幹部の判断のみならず、習を中心とした中国中央政府の強い意志があった。そう考えると、こうした後先を考えない強硬手段に出ることが、習家軍(「習家の軍隊」の意味。転じて、習近平のもとに集まった腹心たちを指す)の姿勢であることは間違いないだろう。だが、今後もそれが礼賛されるならば、そのリスクはかなり大きなものになる。