7月初旬、6月の米国雇用統計(非農業部門の雇用者数増減)が発表されて以降、一時盛り上がっていた景気の回復期待はやや後退している。

 その背景には、6月の米国の非農業部門雇用者数が前月対比マイナス46万7000人となり、5ヵ月ぶりに雇用者数が大幅マイナスとなったことがある。「米国の雇用状況の悪化に歯止めがかからず、米国経済の回復が遅れる」との懸念が出ているのだ。

 「今年1~3月期の最悪期に続く景気の“二番底”が訪れるのではないか」と懸念する専門家も、少なくない。

 足元の世界経済を概括すると、米国や欧州の経済は依然として下落傾向から抜け出せず、経済に元気があるのは、中国を中心とした一部の新興国だけという状況になっている。

 その中国も、一国だけで世界経済を牽引するほどの実力はない。世界経済が本格的に回復するためには、どうしても世界のGDPの約25%を占める米国経済が立ち直ることが必要なのだ。

 米国経済の構造は、基本的に国内消費の主導型である。GDPの約7割を占める個人消費が盛り上がれば、景気の先行きには明るさが見えて来る。米国の家計部門の消費ムードが盛り上るためには、雇用・所得環境の改善が不可欠になることは言うまでもない。雇用や所得に不安が残っていると、家計部門の消費意欲が盛り上がりにくいからだ。

 今後、米国の労働市場の悪化に歯止めがかからず、失業率が一段と上昇すれば、家計部門の所得が増えるはずもない。住宅ローンの返済に終われる米国の家計部門にとって、雇用・所得環境の悪化は決定的なマイナス要素となる。

 つまり、米国の雇用状況が改善しないと、景気の本格的な回復を見込むことは難しいのだ。突き詰めて考えると、「世界経済の行方は、米国の労働市場の動向にかかっている」といっても過言ではない。当分、毎月初に発表される米国の雇用統計から目が離せない状況が続くだろう。

世界経済の先行きを占う
米国経済が抱える「3つのリスク」

 では、その労働市場が改善に向かうための要素は何か? 

 米国の労働市場が改善するためには、基本的には景気に明確な明るさが見えて来ることが必要だ。しかし、その米国経済の先行きには、景気回復を阻害する3つの大きなリスクが潜んでいる。