『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』の著者である、東大卒プロ算数講師の小杉拓也氏は、次のように言います。「中学受験の合格と不合格は『ごくわずかな差』で決まる。」
『ごくわずかな差』とは具体的に何なのか? 同氏に話を聞きました。
中学受験合格のための内部要因とは?
中学受験は、1点差で合否が決まることもあります。合格を勝ち取るためには、受験の「内部要因」と「外部要因」を知っておく必要があります。
内部要因とは、受験生の能力です。言うまでもなく、合格のために、受験生自身の心技体が充実している必要があります。
心技体は特に武道を中心としたスポーツでよく使われる言葉ですが、あらゆる分野に応用が可能です。
受験生でいう「心」は、メンタル、マインドです。平常心、もしくは、適度な緊張感で試験に臨むことが理想です。
「技」は、試験問題を解く手段と考えられます。多くの手段をもっているほど、多様な出題形式に対応することができます。
「体」は、学力と体力です。合格のためには、学力は当然、受験勉強と試験を乗り切る体力が必要です。
この心技体が充実してこそ、最高のパフォーマンスを発揮することができます。ただそれは理想であって、「どれか1つでも少しも欠けてはならない」ということではないので、ご安心ください。例えば、体調があまり良くなくても、気持ちで乗り切って、見事合格するといった話はあるものです。
受験生の内部要因において、「合否は、心技体の総合力で決まる部分が大きい」と考えています。例えば、2人の受験生がいたとして、その総合力が「ちょっとした差」であっても、合格と不合格が分かれてしまうことがあります。
合否は外部要因にも左右される
受験の合否は、外部要因による影響も受けます。外部要因とは、かなりざっくり言うと「運」です。
例えば、
・入試で偶然、自分の得意分野(または、苦手分野)の問題が出された。
・受験数日前まで体調が良くなかったのに、当日けろっとなおった。
・担当の試験監督が優しく、リラックスできた。
ときに、自分の力ではどうにも逆らえない「運」に左右されることもあります(幸運、不運どちらも起こりえます)。
これらは、過去問対策や体調管理を徹底することで、ある程度、制御することはできます。このように「運を味方につける」ための努力ができることも確かです。また、望まないことが起こったとき、内部要因の「心」のもちようによって、それを克服できることもあります。
わずかな差をものにして合格をつかもう!
『孫子』の一節に「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」という言葉があります。「相手と自分のことを知りつくせば、必ず勝つ」という解釈をしていますが、これは受験に大きく当てはまります。
入試の傾向(外部要因)を研究して過去問などを徹底的に解き、自分自身(内部要因)を磨けば、合格の可能性は高まっていきます。
そして、受験の合否は、内部要因と外部要因を総合したうえでの「ほんのわずかな差」で決まることもあります。この連載で紹介している「19×19までの暗算」は、内部要因の「技」の一部です(具体的な計算法と「計算できる理由」は、本連載の第2回を参照)。この計算法を知っているかどうかも「僅差」に関わることがありえます。
合格に必要だと思われることに優先順位をつけて、優先度の高いところから身につけていきましょう。そして、総合力を磨いて合格をつかむことを願っています。