ハイブーツ、太眉、インスタントカメラ、レコード、シティポップ……と、ファッション・メイクから音楽まで、空前の“平成レトロブーム”が続いています。なかでも「平成ドラマ」は大人気で、過去のドラマ作品が見放題のサブスクで検索率が上昇中。今まで約2000本以上のドラマレビューを執筆し、視聴したドラマ数は1500本超えという人気ライターの小林久乃さんによると、「平成ドラマは、今より自由で、過激で、面白かった」といいます。平成世代には新しく、昭和世代には懐かしい平成ドラマの見どころとは?生粋のドラマオタクである小林さんが書き下ろした『ベスト・オブ・平成ドラマ!』の一部を抜粋して紹介します。

トレンディドラマは男女の“すれ違い”に注目!

 令和のテレビドラマでは主人公たちがスマホで会話をしあう光景も、今や一般的なものになった……のだが、ただここでわたしは声を大にして言いたいことがある。

「自宅突撃なんて不審者」平成恋愛ドラマに若者はドン引きも大人気な理由松嶋菜々子さん、堤真一さん主演の「やまとなでしこ」も今の若者が見ると…(写真は「やまとなでしこ」が放送された2000年当時の松嶋菜々子さん) Photo:JIJI

「つながらない、すれ違う美しさが平成ドラマには潜んでいる」

 好きな人に会いに行こうとアポなしで訪問(浮気現場に鉢合わせという修羅場も多々)、男女お互いが会いたいと、お互いが不在の自宅を行き来する。何ならファックスを送信する。待ち合わせ時間に遅れる。主人公が走る、泣く。

 令和を生き抜く若者たちには到底知ることのない青春が、平成には存在していた。そんな様子を過去作で見るのも、新しい愛の世界へ踏み入る第一歩だ。そんなドラマの背景を、通信機器の進化と共に振り返ろうではないか。