すべての仕事は単純な作業の集合体

 私の経営する会社には、Webサイトの公開前に品質を検証する専門セクションがあります。

 具体的な検証方法は、パソコン、Androidのスマートフォン、iPhoneなどの様々な端末を使って、1ページずつチェックを繰り返すことです。まさに単純作業の集合体そのものと言えます。

 ところが、残念ながらこのセクションに配属された新入社員の中には、すぐに仕事に飽きてしまう人がいます。
 
 彼ら、彼女らに限らず、どの職業であっても、「クリエイティブな仕事をしたい」とか、「大きな仕事を任されたい」という希望が強い人ほど、「誰でもできる仕事を押し付けられたくない」と考え、単純作業をおろそかにする傾向にあります。

 ところが、単純作業をおろそかにしていると、大きな仕事を任されるチャンスが巡ってこなくなることを覚えておいてください。 

 なぜならば、いかに大きな仕事であっても、紐解いていけば単純作業の集合体であり、一つ一つの単純作業の「質」がひいては仕事全体の「質」につながるからです。

 Webサイトであれば、いかに素晴らしいデザインであっても、表示が崩れるようでは意味がありません。

 また、どんなに優れた機能を採用しても、動作が不安定では使い物になりません。

 そして、同じスマートフォンでも機種によって一部の仕様が異なりますから、それら一つ一つで丁寧に動作検証する必要があります。

 つまり、公開前の検証作業は単純作業の集合体ですが、とても大切な仕事であり、決しておろそかにしてはいけないのです。

 そのように頭で理解できても、毎日同じ作業の連続では「本当にこのままでいいのか」と将来に不安を覚えても何らおかしいことではありません。しかしそんな時でも、絶対に手を抜いたり、仕事を投げ出したりしてはいけません。

 単純作業をコツコツと正確にこなし続けることで、自然と様々な知識が身につき、大きな仕事ができるようになるからです。

 先に述べたWebサイトの公開前の検証作業ならば、毎日繰り返しているうちに、ユーザビリティ(ユーザーにとっての使いやすさ)、アクセシビリティ(障がい者も含めたすべてのユーザーにとっての利便性)、デザインの良し悪しなどに関する知識が自然と身につきます。

 その頃には、少しずつ大きな仕事を任されるようになるのは間違いありません。

 もし単純作業が嫌になって、専門的な知識を身につける前に投げ出してしまったら、これまでの積み重ねはすべて水の泡になってしまいます。

 したがって、目先の不安にとらわれず、将来の目標だけを見据えて、命じられた単純作業を誠実にこなしていきましょう。その積み重ねが報われる日は必ずくる――そう信じ抜いた人に大きなチャンスは巡ってくるものなのです。

(本記事は『あなたのビジネスライフは入社3年で決まる』から抜粋・編集したものです)