「理解すること」と「身につくこと」の違い
それからもう一点、「理解すること」と「身につくこと」はまったく別物であることを理解しておきましょう。
自転車の運転を思い浮かべれば分かりやすいのではないでしょうか。
サドルにまたがって、ハンドルを両手で持ち、ペダルをこげば、自転車を運転することはできます。しかしそんなことを理解したからといって、すぐに自転車に乗れるようにはなりません。実際に自転車に乗って、何度も練習する必要があります。
仕事もまったく同じです。研修で学んだことを業務で使えるレベルにまで「身につける」には、自転車の運転と同じように、何度も実践を繰り返さなければなりません。
どんな仕事であっても、頭で理解するのはさほど難しくはありません。しかしこの時点で仕事を「分かった気」になって実践を怠れば、一人前にはなれません。
教わったことを実践し、上司から間違いを指摘され、その間違いを直してもう一度実践する……これを何度も繰り返して、ようやく一つの仕事を身につけられます。その過程では数えきれないほど失敗するでしょう。時間も忍耐も必要です。それでも自転車の運転と同じように、一度体で覚えてしまえば、二度と忘れることはありません。それから自然と工夫できるようになり、仕事の幅が広がっていくものなのです。
頭で理解したからといって、「分かった気」にならないこと。体に叩きこませるための実践を惜しまないこと――それが一人前になるための必須条件であることを、忘れないようにしましょう。