終電ギリギリまで残業しているのに仕事が終わらない人と、必ず定時で帰るのに成績No.1の人。この差はいったい何だろう?努力が成果に反映されない根本的な原因はどこにあるのだろうか?そんなビジネスパーソンの悩みを本質的に解決してくれるのが大注目の新刊『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。
著者は、東洋経済オンライン「市場が評価した経営者ランキング2019」第1位、フォーブス アジア「アジアの優良中小企業ベスト200」4度受賞の北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長木下勝寿氏。
本書 の発売を記念し、ビジネスパーソン「あるある」全20の悩みをぶつける特別企画がスタートした。経営の最前線で20年以上、成果を上げられる人と上げられない人の差を徹底研究してきた木下社長にロングインタビューを実施。第9回目は、「仕事ができる人がメールに付け足す一言」について、教えてもらった。(構成・川代紗生)

メールに「2つのフレーズ」を足すだけで、誰でも仕事がデキる人に変われる

デキる人に共通する「メール術」、2つの特徴

──「仕事がデキる人」「仕事がデキない人」では、メールの送り方、メッセージの書き方について、どんな違いがあると思いますか。

木下勝寿(以下、木下):部下からメールをもらうとき、「この人のメールはすごくわかりやすいな」と感心することがあります。

 彼らのメールに共通する特徴は、大きく分けると2種類。

 1.YESかNO、AかBなど、2つの選択肢を提示する
 2.最後に「このままでよろしければ返信は不要です」という締めの文章がある

──なるほど!それぞれ、具体的にお聞きしてもよろしいでしょうか。

できる人はやっている「2択提示」メール

木下:たとえば、仕事で上司の確認を取らなければならないケースについて考えてみましょう。

 新しい案件のマーケティング戦略をどうすればいいか、情報発信のタイミングは◯月◯日でいいのかなど、上司に相談のメールを送るときがあります。

 とはいえ、相手も管理職で忙しいので、すべてのメールにしっかり目を通すのが難しいときもあります。

 そんなとき、どうすればいいか?

 デキる人は、「相手に速く返信させる」コツを心得ているんです。

──自分が速く返信するだけでなく、「速く返信させる」コツですか。

木下:優秀な人は、上司にせよ取引先にせよお客様にせよ、相手が何を求め、どうすれば相手が気持ちよく動いてくれるのか、何手も先まで見通しているものです。

 それは、メールの書き方でも同じ。

 上司に確認を取るときも、必ず「上司にどうしてほしいか」が明確なのです。

 たとえば、以前、部下が私に送ってきたメールは、こんな内容でした。

 まず、現状説明が簡潔に書かれた後に、次の要素がまとめられていたのです。

「最後に、この件で社長にお願いしたいことは、以下の2点です。

 1点目。これについてAとB、どちらが適切か選んでください。

 2点目。選んだ理由をお教えください。」

 このように、ほとんど一言で答えられる状態で送られてくるのです。

──趣旨が明確だから、メールを読むときのストレスも少ないうえに、選択肢を提示してくれているから、メールを返すストレスも少ない。

 だからこそ、メールを受け取った側の「返信のハードル」が下がるわけですね。

木下:そうなんです。

「このメールはすぐに返せそうだな」と相手が思ってくれれば、仕事も進みやすいですよね。

 一方、仕事がデキない人は、YES・NOで答えられるまで整理しない状態で相談してくるんですよ。

 部下の中でも頭が整理されていないあやふやな状態で「これってどうすればいいでしょうか?」というメールがくると、相談された上司も、「メールの返信文面を書くのに結構時間がかかりそうだな」と身構えてしまい、後回しにしがちになります。

デキる人のキラーフレーズ
「このままでよろしければ返信は不要です」

──デキる人は、相手の手間を最小限にすることを考えてメールをしてきているわけですね。

木下:デキる人は、読む相手にどうしてほしいか、ゴールを意識しながらメールをつくっている。一方、デキない人は、ゴールもわからないままメールを書いている。その違いは、大きい。

──業務報告のメールで、ポイントになるフレーズなどはありますか。

木下:デキる人の報告メールは、「このままでよろしければ返信は不要です」とまとめられていることが多いですね。また、少し内容に不安点がある場合は「もし、修正や問題がある場合は●月●日●時までにご返信ください」と付け加えられている場合もあります。

 これだと、問題ない場合は相手も返信する必要がないし、逆に、相手からの「わかりました」という返信を待つ必要もない。

「期限に絶対遅れない人」がやっている「予備」ルール

──なるほど……。毎回、自分なりの最善解を用意したうえでメールをするわけですね。

木下:「仕事が速い人」「期限に絶対遅れない人」は、常に先を読んで仕事をしているものです。これは、メールに限らず、あらゆる仕事術に関していえることです。

──『時間最短化、成果最大化の法則』では、「期限に絶対遅れない人の法則」として、「予備を用意する」という習慣が紹介されていましたよね。今回のお話とも、通じるところがあると感じました。

木下:そうですね。たとえば、プロジェクトの企画書を期限までに提出しなければならないとしましょう。

 そのとき、上司のOKが出ず、期限に間に合わない!ということになるかもしれません。

 本当にデキる人は、そのようなリスクを加味し、予備の企画書をもう1本用意しておくものです。2本提出して、2本ともダメになる確率は、1本しか出さない場合よりもずっと低い。

 予備を用意することは、期限を守ることにつながります。

 このように、自分が最善と思う2つの選択肢を相手に提示すれば、上司にOKをもらえる確率もスピードも速くなり、結果として、信頼度も上がっていきます。

──「この人はいつも限界まで考えきったうえで相談してくるから、もう少しレベルの高い仕事も任せられそうだ」と、上司の安心感にもつながりそうですね。

木下:メールもやみくもに送るのではなく、どうすれば相手がスムーズに返信したくなるか?と、先を読んで動くこと。

 そんな丁寧な仕事ぶりを、見てくれる人はいるはずです。

「たかがメール」と思わず、仕事一つひとつをチャンスに変えていけるといいですね。

(本稿は、『時間最短化、成果最大化の法則』に掲載されたものをベースに、本には掲載できなかったノウハウを著者インタビューをもとに再構成したものです)