医療・製薬業界「重大ニュース」ランキング2022、医療コンサルが解説写真はイメージです Photo:PIXTA

2022年の医療業界、製薬業界にはどのような出来事があっただろうか?この1年を振り返り、筆者の独断と偏見で選んだ業界の重大ニュースを、ランキング形式で解説する。(医療コンサルタント 武知志英)

コロナ治療薬ゾコーバは「使いにくい」と医療現場

第10位 2021年度の製薬企業の平均年収 1000万円超が11社
 製薬業界は比較的、平均年収が他の業界よりも高いことで知られている。2021年度(大半は22年3月期または21年12月期)の製薬企業の有価証券報告書を見ると、従業員の平均年収が1000万円を超える企業が11社あった。

 ただし、従業員の平均年齢は40代後半から50代が多い。製薬業界が20代~30代にとって魅力的な給与体系や職場かは、今後の製薬業界の隆盛に関わるだろう。筆者はこれらに懸念を持っているが、その理由は第5位で詳しく述べることにする。

第9位 MSDの「キイトルーダ」が2028年に特許切れ、対策はいかに?
 22年1月~11月で、国内の医薬品売上金額ランキングで2位が、MSD製薬(米メルクの日本法人)の「キイトルーダ」だ。キイトルーダは、同社の主力製品の一つで、複数のがん治療に汎用されている抗がん剤である。

 医薬品は特許が切れると、安価なジェネリック医薬品に切り替わる。キイトルーダは28年に特許が切れるが、メルクはそれまでに、従来の点滴投与のキイトルーダに替えて、新たに皮下注射タイプを市場に投入しようと開発を急いでいる。米国の法律では、医薬品の特許は取得後20年間の独占期間が保証されているが、企業が特許を追加してその期間を延長できる場合もある。これによりメルクはキイトルーダの売り上げ減少を食い止められるかもしれない。

 ただ、医薬品の価格や薬価制度は、国のマターであり、国がルールを変えれば、その影響はキイトルーダでも免れない。本件は引き続き要経過観察といったところだ。

第8位 新型コロナ治療薬ゾコーバの承認と、医療現場の声
 新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」が承認され、医療機関で処方可能となった。ところが、実際に処方が開始されると、調剤薬局の薬剤師からは「ゾコーバは併用禁忌の薬が35種類、併用注意の薬が70種類もあり、そのチェックが非常に大変だ」との声が上がっている。医療現場から「使いにくい」と指摘される中、ゾコーバがどれほど用いられるか、動向を見守りたい。

次ページ以降、7位から1位までの重大ニュースを解説する。医療・製薬業界に身を置く人はもちろん、就職・転職希望者や、取引先の異業種の方々も、ぜひ参考にしてほしい。第5位では、大手製薬企業がこぞって進めるリストラの最新状況を、関係者への聞き取りも踏まえて明らかにする。