人生100年時代だからと、「いつまでも若々しく元気な老人」をやたらとほめそやす世の中だ。しかし程度の差こそあれ、能力は著しく低下し、できることが減っていく。その現実から目をそむけてはいけないと、私は思う。
「できない」ことが増えていく現実を受け入れてこそ、「できる」ことを大事にしはじめる。自分の能力の限界を思い知りながら、それでも「できる」ことを大切にし、日々の達成感を得ていく。
私はそれを、仕事を続けることで学んだ。決まった時間に家を出て、会社に無事たどり着いただけで「やったぜ!」と思う。そんな感覚は、若い頃にはなかった。
だが、87年生きてきた結果、「働く」ことに関してそれなりの知識と経験を得た。それを同じ高齢者である仲間たちに、伝えたいと思っている。
こうしなさい、と押し付ける気は毛頭ない。普通の人間が普通に働いていれば、「働く幸せ」はきっと手に入る。そんなふうに思ってもらえれば幸いだ。