都会で孤独な男性は「早死にリスク」が肥満のヘビースモーカーと近いワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

男性の孤独は寿命を縮める?

 突然だが、「寿命を縮める」と聞くと何が思い浮かぶだろうか。

 まず「高血圧」と答える人は多いはずだ。テレビCMなどでも高い血圧を心配するようなメッセージは毎日のように流されている。また、「タバコ」という人もかなりいるのではないか。喫煙者ががんになる確率が高いことはよく知られている。

 そんな世間のイメージは概ね正しい。「日本における危険因子に関連する非感染症疾患と外因による死亡数(2019年)」というデータがある。これは日本人がどんな原因で体を悪くして、亡くなっているのかという死亡者数を調べたもので、もっとも多いのは「高血圧」で約19万人、次に多いのが「喫煙」で約18万人、そして「高血糖」の約10万人となっている。(出典:Nomura S, Sakamoto H, Ghaznavi C, Inoue M: Toward a third term of Health Japan 21-implications from the rise in non-communicable disease burden and highly preventable risk factors.  The Lancet Regional Health – Western Pacific 2022;21:100377)

 つまり、よく言われる「高血圧をほうっておく」「タバコを吸う」「運動せずに太っている」というのは、やはり健康に悪く、寿命を縮めていることが、データでも裏付けられているのだ。

 ただ、実はあまり知られていない「人を早死にさせる原因」がもうひとつある。それは「孤独」である。厚生労働省が掲げている国民の健康増進を目指す指針「健康日本21(第二次)」の取りまとめを行った、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の辻一郎教授はこう語る。

「公衆衛生の世界では、都会で誰とつながりも持たず、孤独さを感じながら生きている男性というのは、太った人がタバコを吸っているのと同じくらい体に悪いことをしていると言われています」(辻教授)

 ドキッとした男性諸氏も多いのではないか。2020年の国勢調査によれば単身世帯は2115万1042世帯あって、65歳以上男性の一人暮らしは約231万人いる。今後もこの数はさらに増えていくと言われている。つまり、今は家族やパートナーと一緒に暮らしていたとしても、「孤独な男」になる可能性はかなり高いからだ。

 それにしても、なぜ「孤独」という心の問題が、タバコや肥満と同じくらい健康を害するのか。それを説明するためには、まずは今、世界で「ポジティブサイコロジー」という概念が注目されていることを知らなくてはいけない。