妊婦と電卓4月からの出産一時金の大幅増額が決まったが…(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新年に発表された「異次元の少子化対策」では、出産育児一時金の大幅引き上げが打ち出された。しかし、出産費用を賄うためのこの制度は、構造的に限界を抱えている。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第253回では、出産費用の実体とこれまでの給付金制度の状況をひもときつつ、本当の意味で「異次元」の対策とするためには何が必要なのか考えてみよう。(フリーライター 早川幸子)

「異次元の少子化対策」がスタート
4月から出産育児一時金が50万円に

 1月4日、岸田文雄首相は伊勢神宮に参拝し、その後に行われた年頭記者会見の冒頭で、2023年は「異次元の少子化対策に挑戦する」ことを表明した。

 新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2022年の日本の出生数は80万人を割り込む見込みで、少子化対策は待ったなしの状況だ。

 そこで、「子どもファースト」の社会を作り上げるとして、4月に発足する「こども家庭庁」で必要な政策を体系的に取りまとめ、6月に出す「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」に、子ども関連予算の倍増を盛り込む方針だという。

 どうやら、2023年は、子ども・子育て関連の政策が大きく動く年になりそうだ。

 この流れは昨年から始まっており、2022年4月以降に妊娠、または出産した人に対して、出産準備金として、子ども1人につき10万円相当のクーポン(妊娠時5万円、出産時5万円)が支給されることになっている。

 そして、もう一つ決まっているのが、公的医療保険(健康保険)の「出産育児一時金」の大幅引き上げだ。これまで子ども1人につき42万円だったものが、今年4月から50万円にアップする。

 国が、出産育児一時金の大幅引き上げを実施した背景には、どのような事情があるのか。4月以降の改正内容を確認しておこう。

●4月から出産育児一時金は現行の42万円から50万円に増額、出産費用の平均額を上回る
●出産費用は地域差が大きく、年額約1%上昇中。抜本的対策には出産費用の保険適用が求められる