後発薬大手・日医工の社長「肉声なき」辞任表明の愚、社員の持ち株は紙くず同然にPhoto:JIJI
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 牟田口廉也と言えば旧日本軍でも指折りの「愚将」として知られる。兵站を無視した攻撃一本槍の「インパール作戦」を周囲の懸念や反対を無視して立案・強行し、その結果、およそ6万人に上る死傷病者を出した。加えて、それまで英印軍に対して互角にあった日本軍の戦力を崩壊させ、ビルマ(現ミャンマー)を連合軍側へと離反させた挙句、日本軍がビルマから遁走する原因をつくった。

 戦後、偶然が重なり戦犯を免れると、程なく軍歴への自己弁護活動に熱を出すようになり、旧軍関係者や「白骨街道」の犠牲となった戦没遺族らを呆れさせた。今日では無謀な戦略を独断専行しておきながら、責任からは逃げる無能なトップの代名詞として、インターネットミームと化しているのは、周知のとおりである。

 歴史から学ぶとは本来、こうした人物が仮に“不適材不適所”を重ねたとしても、集団を率いる場でのさばらぬようにする人の叡智のはずである。だが悲しい哉、血の代償を払ってもなお、第2、第3の牟田口が途切れることなく、社会や組織に災いを振り撒く構図が続いている。米国由来のリーダシップ論が曲解されて輸入されて以降は、知性の乏しさを胆力で代替し、戦略を拙速と混同する輩まで現れた。

 さて、業界のお騒がせ企業・日医工である。同社は活字メディアの仕事納めにぶつけたかのように昨年12月28日、3回目の債権者会議を開き、経営再建に向けた私的整理である「事業再生ADR」が成立したと発表した。何とも姑息である。