日本社会に暗い影を落とす新型コロナウイルス禍が始まってから、はや4年目。パンデミックを引き起こした中国由来のこの感染症は、人類の歴史が例外なく示してきたように、その社会が隠したがる最もやわな部分から、偽りを暴き出していった。これまでに2つの政権があっけなく倒れ、本来なら一丸となってウイルスに立ち向かっていかねばならない医療セクターに至っては、蛸壺化した専門家同士によるマウンティングによって、空回りを続けた。国民の心には、“世の上に立つ者”に対する深いニヒリズムが刻まれた。
23年を眺めても、見事なまでに好材料が見当たらない。諸物価の高騰に苦しむ折に、追い打ちをかけるような増税話が、瞬く間に組み上げられた。「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」なるお題目を高らかに掲げた「新しい資本主義」構想は、記憶が正しければ1年以上も前に始動したはずだが、具体的な成果を上げぬまま時間だけが浪費された。岸田文雄政権への支持率が足元で30%を切ろうかというのも、宜なるかな、といった印象だ。
ところでこの支持率を、製薬業界各社のトップを対象に、社員を筆頭とするステークホルダーらの声で測ってみたとすれば、ブービー賞で間違いなしと思われるのが武田薬品のクリストフ・ウェバー社長兼CEOであろう。早いもので、長谷川閑史前会長兼CEOから社長職を禅譲されて、今年で10年目を迎える。天下の武田が“青い目”のトップを迎えたと、大胆な後継者選びへの驚きと並んで、当時は未知数であったウェバー氏の「力量」に対する身構えと警戒が、業界内に走った記憶も新しい。