寒波が襲った山頂に取り残された観光客

 ケーブルカーや野外の超高度観光エレベーターなどを待つために、徹夜して列を作る観光客も多数いた。

 安徽省の黄山観光当局は1月24日に3万4385人の観光客を受け入れ、春節休暇期間中の1日当たりの受け入れ人数としては2018年以降で最多となったという。24、25日とも黄山の入山チケット予約が満席になったと案内を出した。

 ただ、24日は黄山で大雪が降って、観光客はマイナス15度の寒さに耐えなければならなかった。列に並んでケーブルカーの切符売り場にたどり着くまで6時間もかかったと報告する観光客もいた。辺りが暗くなっても、列を作って辛抱強く乗るのを待つ観光客もいたようだ。

 張家界森林国家公園の山頂でも大変な人だかりで、観光用エレベーターに乗って下山するには3時間以上待たなければならなかった。一部の人は山頂にとどまったまま21時になっても下山できなかったとの声も寄せられたが、張家界森林国家公園は翌日の25日に慌てて次のような説明文を出した。

「1月24日に観光地の受け入れ人数が6万人を超え、1日当たりの受け入れ人数が過去最高を記録した。観光客をケーブルカーで下山するようにした。観光客が山の上に滞在して一夜を明かした事実はない」

 西安の秦始皇帝陵では、23日に訪れた観光客が「兵馬俑より人が多く、何も見られなかった。支払った入場料が無駄だった」と揶揄(やゆ)する声も上がった。秦始皇帝陵博物院の知らせによれば、同施設の最大受け入れ人数は6万5000人で、その人数を超えるとチケット販売を中止するという。その結果、24日から26日までのチケットはすでに完売したようだ。

 波のように押し寄せてくる観光客の流れを見て、胸をなで下ろした観光業者が多い。これで経済が正常に動き出したことを体感できたと感激した人もいる。

 一方、民衆にとってはようやく春節らしい春節を迎えることができたという感想がSNSにも多数出ている。

 春節を送ることは中国語で「過年」と言う。過年には、「年味」、つまり春節らしい雰囲気というのが求められる。年味がどんどん薄れてしまうという嘆きもここ十数年よく聞かれる。貧しさに耐える生活を強いられた昔は、ささやかな食事でも豪華に感じたので、春節のごちそうが印象に残りやすかった。

 ものが氾濫する時代のいまは、食べ物に対する感動を呼び戻すことが困難だ。では、なぜ今年の春節は、わりと年味を取り戻したのか。