中国のゼロコロナ政策の終了は、巨大化したゼロコロナ産業の消失を意味する。この政策で、中国全土で新たな産業や新たな雇用をもたらしたが、180度の転換で中国の国民経済は大混乱だ。感染拡大とロックダウンのダメージはもとより、ゼロコロナ政策による“失われた3年”、そして突如もたらされた失業と空手形・・・、そのインパクトはあまりにも大きい。(ジャーナリスト 姫田小夏)
「ゼロコロナ産業」の終了で1000万人超が失業
中国でゼロコロナ政策が解除されたのは12月7日のことだった。その後、わずか数日のうちに、上海では感染が拡大し、外出も外食もしない高齢の李さん(仮名)までをも直撃した。「まさか自分が陽性者になるとは……」と突然の政策転換にうろたえる李さんだが、中国には今、二つの声が存在すると明かしてくれた。
「中国では『ゼロコロナ政策をやめてよかった』と政策転換を支持する声は大きいですが、『ゼロコロナ政策をただちに復活させよ』という要求もあるのです」――という。
新型コロナウイルスで命を落とした人もいれば、後遺症に悩む人もいる。基礎疾患を持つ人々にとって“ロックダウン”は安全性の担保だったのかもしれない。その一方で、ゼロコロナ政策の復活を希望する声が示すのは、“ゼロコロナ産業”に生活を依存する人々が少なくなかったという側面だ。
中国では、この3年でゼロコロナ産業が一大産業に成長した。これを象徴するのが、1月7日に重慶市の工場で起こった抗議活動だ。コロナの抗原検査キット工場で、数万人の従業員が警察と衝突し、激しい抗議活動が行われたという。複数のメディアは原因について、「ゼロコロナ政策の転換により、注文が入らなくなった工場側が1万人以上をリストラしようとしたため」と報じている。
住民の恨みを買いながら“大活躍”した白い防護服の防疫要員たちも、今では無用の人材になってしまった。この突然の失業に面食らった防疫要員たちが、各地で抗議の声を上げている。表向きは「ボランティア」とされている彼らには手当が出たが、未払い問題が顕在化しているためだ。
10兆元(約200兆円)規模ともいわれる中国のゼロコロナ産業だが、米ラジオフリーアジアは「ゼロコロナ産業の終了で1000万人超が失業する」と伝えている。