なぜ「YCC据え置き」だったのか、出口戦略に向けた日銀の打算と勝算世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の討論会に出席した黒田東彦日銀総裁 Photo:EPA=JIJI

長期金利上限再引き上げは行わず
正常化に向けて新たな”布石”

 10年物国債利回りがイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の長期金利上限を超える事態が起きる中、1月17日~18日に開かれた日本銀行の金融政策決定会合は、市場が予想したYCCの追加修正は行わず、現状維持だった。

 決定会合後、記者会見した黒田東彦総裁は、昨年12月に「国債市場の機能回復」を掲げて行った、YCCの長期金利上限引き上げの効果を見極める必要があると述べ、同時に緩和政策を維持することで経済回復や賃上げを後押して安定的に2%物価目標を達成する狙いを改めて強調した。

 だが国債市場の機能低下やイールドカーブのゆがみは、昨年12月の政策変更の後も続いており、日銀が再度の上限見直しに動いてもおかしくはない。

 1月会合で「政策据え置き」を決めた裏には、4月以降の新体制での金融政策の正常化をにらんだ思惑が感じられる。実際、1月会合でも将来のYCC見直しや撤廃に向けた布石も打たれた。