ドル安は期待ほど進まず、名目円高でも「安い日本」を象徴する実質的な円安Photo:PIXTA

2023年は円高ドル安の年となるといわれていた。しかし、22年11月以降の円高反転時からみても大きく円高は進んでいない。名目で円高が進んでも実質ベースでみれば依然、歴史的低水準にある。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

円の自律反発はおおむね完了したか
言うほど弱くないドル

 2023年最初の1カ月が終わろうとしている。過去のコラムでも論じたように、筆者は「22年の揺り戻しで23年は円高の年」という単純な見方に賛同していない(22年10月3日付『円安は「23年春になれば止まる」論に疑問を呈する3つの理由』などを参照)。

 確かに22年は、プラザ合意以降では「史上最大の円安の年」であったが、同年11~12月でその半分が戻されている。円の対ドルレートで23年に実現した値幅は38.47円(151.94円-113.47円)で歴史的な大きさだとしても、11~12月中に131円まで戻している。113~131円ならば18円程度であり、それほど珍しい値幅ではない。

 変動為替相場制で取引される以上、「売られ過ぎたから買い戻されるはず」という自律反発を期待するのは正しいが、自律反発を期待するならば、それはおおむね完了しているという疑いは強い。

 また、円相場に限らず、為替市場全体を見渡すと「23年はドル安の年」という予想が多い。FRB(米連邦準備制度理事会)の姿勢転換(Pivot)が予想される中、米金利低下に伴うドル安を期待する胸中はよく分かる。

 しかし、2月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げ幅を0.5%から0.25%に減速させるまでは既定路線だとしても、「0.25%がいつまで続くか」については全く予断を許さない状態にある。

 今後、円はさらに巻き返せるのか。次ページ以降検証していく。