円安は「23年春になれば止まる」論に疑問を呈する3つの理由Photo:PIXTA

FRB(米連邦準備制度理事会)は、急ピッチで利上げを進めている。拡大する日本との金利差が円安進行の主因となっている。市場では、23年春には米国のインフレ圧力が後退し、金利のピークが見え円安も止まるとの見方も多いが、その見通しに疑問を呈する三つの理由について解説する。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

過去最大規模の介入も
効果は短期的

 周知の通り、9月のドル円相場は一時146円手前まで急騰し、年初来高値を更新した。政府・日銀による円買い為替介入によって続伸は免れたが、金利および需給の両面から円売り圧力は根強く、本稿執筆時点では際立った水準調整にはつながっていない。

 1日で2.8兆円という過去最大規模で行われた介入の効果がごく短期的なもので終わったという事実は、それだけ円売り圧力が強いことを示唆しているだろう。

 これまで論じてきた点ではあるが、今次円安はファンダメンタルズに支えられた円安であり、円売りそれ自体に正当性があることは忘れてはならない。

 もっとも、通貨防衛という観点から、まだ日本には改善余地がある。周知の通り、政府のつかさどる通貨政策が通貨高を志向し、日銀のつかさどる金融政策が通貨安(≒緩和)を志向するという「ねじれ」状態は放置されたままであり、双方のベクトルをそろえない限り、せっかくの介入効果も薄れてしまうというのが、理論的(かつ一般的な)解釈になる。

 市場の意表を突いた割に水準の調整が進んでいないのは円売り圧力が大きいこともあるが、そうしたポリシーミックスの「ねじれ」も影響していそうである。通貨・金融政策の方向感をそろえれば、その威力はさらに増すはずである。

 こうした状況下、巷説(こうせつ)では23年1~3月期にFRBが利上げ終了にめどをつけ、米金利とドルの反落が始まり、これに伴って円安が収束するという予想が目立つ。

 こうした市場に流布する「23年春に円安は止まる」との見方は正当化されるのだろうか。この見方に疑問を呈する三つの理由について、次ページから解説してゆく。