気象予報よりも高精度な予測が可能に
産業分野でのビジネスチャンスは無限大
実際に使用される気象データの多くは、気象庁から提供されている。
気象庁が気象衛星やアメダスで観測を行い、外国の観測データも収集し、日々の天候を予測しているのはご存じだろう。気象庁による気象の観測・予報データは、漁業、農業、エネルギー産業、交通、物流、保険、金融、観光業などあらゆる分野で利用されている。さらに現在はデータを民間企業が活用することを推奨している。
その一端として気象・データサイエンス・ビジネスの各分野について学べる民間のデータ分析講座を、「気象データアナリスト育成講座」として気象庁が認定する仕組みを2021年2月に開始。アナリストの育成を推進している。気象庁の認定を受けている講座は、データミックス社の講座を含めて、現在3講座ある。
「これまでも農業やアパレル、清涼飲料などの分野で気象情報の活用に取り組んできました。しかし、より多くの分野で気象データが利用され、我が国における産業活動が活性化するよう、2017年に『気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)』という産学官連携の組織を立ち上げました」(気象庁情報基盤部情報利用推進課・気象ビジネス支援企画室・森 好恵さん、以下同)
WXBCでは、気象に関するビジネスモデルの創出や、人材育成に向けた講演や研修を行っており、気象データの活用を通して経済活動を活性化させるのを目的としている。
企業による気象データの活用事例は、WXBCによりまとめられている。その一例を紹介しよう。
JR西日本の北陸新幹線では、冬になると車体に降雪が付着してしまい、雪落としをしなければならない。同社は天気予報で判断していたが、精度が低いため、不必要な作業を行うことが多々あった。この課題に対し、列車遅延本数の削減と雪落とし作業員の出動費用の削減を目標に設定。2年分の冬季気象データを用いて着雪量との関係をモデル化することに成功した(WXBCの事例集から引用)。
「気象は経済や社会活動に大きな影響をもたらしています。DX化の進展に伴い、さまざまな業界でデータ活用が進んでいる状況です。気象データは今後、新たなビジネスチャンスをもたらすと考えています」
気象データは、産業分野での大きな可能性を大いに秘めている。それに携わる気象データアナリストは、これからの社会に必要な職業であるのは間違いないだろう。