最後の「黒田サプライズ」の確率は
無視できないくらいの大きさ?

 ところで、3月9日、10日の両日には、日銀で現体制最後の金融政策決定会合が行われる。この会合で黒田総裁がYCCの始末を前倒しして行う可能性が、小さいけれども無視できないくらいの大きさの確率であり得るのではないか。

 例えば、注目を一身に集めるはずの植田新総裁(候補)が当面の金融政策を継続する必要性を強調すると、長期金利上昇に賭ける投機をある程度抑制できよう。その一方で、YCCの上下の範囲を廃止するといきなり黒田氏が発表すると、日銀は余計な防衛買いを減らすことができる。「サプライズが過ぎる」との批判を黒田現総裁は受けるかもしれないが、YCCの処理には有力なシナリオだ。

 解除がサプライズであろうとなかろうと、その後に表れる変化は長期金利の上昇になるだろう。

「イールドカーブの自由度の拡大は金融緩和の継続と効果浸透のために有効であり、金融緩和の縮小を意味するものではない」と説明することは理屈上は可能だ。しかし、そうであっても、市場関係者を含めて大半の人はこれを一種の利上げであり、金融緩和の縮小だと受け取るだろう。これは前回の金利変動の許容幅変更(0.25%→0.5%)で経験済みの反応でもある。

 植田新総裁体制では、金融緩和は基本的に維持されるがYCCは緩和ないし解除されると見るならば、米国の連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにそろそろ上限が見えてきたことでもあり、例えば為替レートに関しては「マイルドな円高傾向」くらいを予想するのが妥当に思える。