雨宮氏の総裁固辞にまつわる
「もう一つの問題」とは?

 もう一つの問題は、将来の予想により大きく関係する。それは、雨宮氏が事実上、今の金融政策を見直す前提で話をしていることだ。現役の副総裁として、現在の金融政策が適切であり正しいと思っているなら、「これまでも、これからも、日銀は適切な金融政策を継続する」と胸を張ればいいのだが、彼はそうはしなかった。

 例えば、首相官邸筋から、新総裁としてこれまでの政策を大きく転換することを強く求められていたのなら、「それは無理だ」「やりたくない」と雨宮氏が考えることはあり得ないことではない。そう考えると、植田氏には、政府の意向に沿って動いてくれる「使いやすい総裁」として白羽の矢が立った可能性が浮上する。

 人事の問題なので真相は分からない。今は「日銀総裁」が受けない方がいい「地雷ポスト」である隠れた理由があるのかもしれないし、雨宮氏に特有の個人的な事情があるのかもしれない。

 しかし、いずれの理由があったにせよ、雨宮氏の発言は「ポストを固辞する人の普通の理由」として聞き流すには内容的に重大だ。

 一見ソフトな印象に見せて、政府は金融政策の大きな転換を目指しているのではないか。日銀に関する「岸田リスク」が回避できたと安心するのはまだ早いかもしれない。新体制の日銀の政策決定会合は、4月、6月、7月に予定されている。