日本銀行Photo:Bloomberg/gettyimages

日本銀行の総裁に、経済学者の植田和男氏が就任する見込みだと報じられた。『週刊ダイヤモンド』2014年5月3・10日合併号における植田和男氏と私の対談で、植田氏は異次元緩和後の出口の難しさを吐露していた。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)

黒田緩和下で日本経済は低迷
残した課題は後任総裁へ

 4月8日に任期が来る日銀の黒田東彦総裁の後任に、政府は経済学者で元日銀審議委員(1998年4月~2005年4月)の植田和男氏を指名する方針だと報道されている。

 結果的に非常に良い人選になったのではないかと筆者は考えているが、次期日銀総裁の前には非常に厳しい“いばらの道”が待っている。

 下の図表は、名目GDP(経済規模)に対する中央銀行資産の比率を表している。日銀は従来から世界の中央銀行の中でも莫大な資産を抱えていたが、黒田東彦総裁就任後の2013年以降、国債やETFなどの“爆買い”により、その規模は凄まじく膨張してきた。

 しかし、こんなにも激しい金融緩和策が行われてきたのに、それが経済成長に結びついていない。下の図表は、先進国(人口百万人以上)の5年毎の累積実質経済成長率の順位である(7~20位は省略)。

 2012年までの5年間、日本はマイナス1.7%成長で21位だった。黒田総裁による異次元緩和が始まった次の5年間(13年~17年まで)にプラス6.4%成長に転じたが、先進国における順位は逆に27位に下がった。他の先進国は実は当時もっと成長していたのである。

 続く2022年までの5年間は、悲しいかな、最下位の32位に落ちる見込みだ。実際、日本経済には現在閉塞感が漂っている。

 黒田緩和の10年間を通じて再認識されたことは、深刻な構造問題(高齢化・人口減少やデジタル化の遅れなどによる生産性低下など)を抱える日本経済には金融緩和の効果は限られるという点である。

 かといって、黒田緩和下で無節操に膨張してしまった日銀のバランスシートを正常化していく作業は容易ではない。それが予見されるが故に、次期総裁として取り沙汰されてきた多くの有力候補者が、内々に総裁就任を辞退していたようだ。

 筆者は、『週刊ダイヤモンド』2014年5月3日・10日合併号で植田氏と対談している。次ページでは、植田氏自身が黒田緩和の出口の難しさを語った場面を公開する。