百貨店業界の低迷が続いている。日本百貨店協会によると三3月の売上高は全国で前年同月比1.2%減、東京は同0.7%減に終わり、春先の商戦も振るわなかった。
「株価下落による逆資産効果もあって、“新富裕層”の購買力が落ちている」(奥田務・J.フロント リテイリング社長)というように、絵画や宝飾品など高額品の落ち込みが響いた。
市場は11年連続して縮小しており、低迷は久しい。そんななかでも売り上げを伸ばし続け、“勝ち組”として知られてきたのが伊勢丹新宿本店だった。
ところが、今春はその伊勢丹新宿本店でさえも、3月は1.8%減、4月は0.8%減と2ヵ月連続して前年を下回る結果となった。3月は法人外商が前年比20%減となり、4月は日曜が1日少ないという日取りの悪さも影響した。
「アパレルからの商品調達力を維持するためにも、伊勢丹は売上高で前年クリアという数字への執着はそうとう強い」(業界関係者)という。それだけに、これまでは厳しい環境にもかかわらず、新宿本店の売上高はプラスを続けてきた。しかし、今回はついにカバーし切れなかったようだ。
頭が痛いのが、高額品のみならず、稼ぎ頭である婦人服が伸び悩んでいること。「女性が服におカネをかけなくなり、スーツの代わりにワンピースとカーディガンで出勤したり、ブーツも春先まで履ける丈の短いものを選ぶ傾向にある」(百貨店関係者)という。
こうした傾向は伊勢丹も同じで、「最近の苦戦で商品政策を練り直す必要があり、新宿本店の改装時期を春から秋に延期した」(伊勢丹)ほどだ。
勝ち組でさえ抗い切れない消費不振は、本格的な景気の腰折れを予感させる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 須賀彩子)