お店で「すみませーん」に気づいてもらえない人へ、声の距離感・高さを変えよう写真はイメージです Photo:PIXTA

飲食店で「すみません!」と叫んでも気づいてもらえない。何度も相手に聞き返される――。こんな経験をしたことはありませんか? 声が通らないという悩みを抱える人は多いものです。しかし、元アナウンサーでスピーチコンサルタントの阿部恵氏は、ちょっとしたことを意識するだけで、誰でもスッと通る声になれると言います。※本稿は、阿部恵『1日1トレで「声」も「話し方」も感動的に良くなる』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

人とすれ違うときに、
少し遠くから挨拶する

 レストランや居酒屋で何度も「すみませーん」と、声を出して注文をしているのに、なかなか気づいてもらえないことがありますよね。

 ざわざわした店内で様々な会話が交錯する中、気づいてもらうのは大変です。

 自分では思いっきり声を張り上げているつもりなのに、気づいてもらえないとなると、ショックだし、時にはイラッとすることもあるのでは。

 声が通る人と、そうでない人の違いは、どこにあるのでしょうか?

弧を描くように声を出す

 声には通り道があります。

 声が通らない、という悩みを抱える人の多くは、「声を出すときに下を向いている」場合が多いようです。または、「声を前に出そうとしていない」ことが考えられます。

 例えば、顔を下に向けてみてください。その状態で、

「おはようございます」
「山田太郎(自分のお名前)です」

 と発声してみてください。

 どうでしょう? ノドが圧迫されて、声が出しづらいですよね。

 下を向いてしまうと、声は前に出ないのです。

 また、前を向いていても、声を届けたい人に飛ばそうという意識がなければ、残念ながら声は前に飛びません。あなたの顔のあたりで、ぼとっと落ちてしまうイメージです。

 当然のことながら、声は口から出ます。そして、口が向けられた方向に出ます。

 ですから、「この人に声を届けたい」と思った方向を向いて、声がそこに到達するような意識を持てばいいのです。

 声の出し方は、歌を歌うときと似ています。

 私は「弧を描くように声を出して」と伝えています。緩やかな山の形を描きながら、相手の方向に声を飛ばしていくイメージです。

数メートルの距離感を
イメージする

 伸びやかに通る声にするために大切なのが、「少し離れた人に発声する」という意識です。

 私は「2~3メートル離れた人に声を飛ばしましょう」と伝えています。

 声を届ける際の距離感を考えると、声が通るようになるのです。

「距離感」といってもわかりづらいかもしれませんね。

 例えば、学校や職場で、隣の席の人や前の席の人に話しかけるときの声の大きさを想像してみてください。どれくらいでしょうか。

 次に、駅の反対側のホームに友達を見つけて、「○○さ~~ん」と声をかけるときの声の大きさはどうでしょう。明らかに違いますよね。

 駅の反対側ホームに友達を見かけたときのほうが、声ははるかに大きいですよね。

 そうなんです。声を届ける到達点をどこに設定するかで、声の通り方が変わってくるのです。