変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋している本連載の書下ろし特別編をお届けする。

藤井聡太五冠が指し手の精度を上げるために習慣にしていることとは?Photo: Adobe Stock

ビジネスには様々な不確実要素がある

 ビジネスには様々な不確実要素があります。特に、新規事業や海外での事業など、未知の領域に事業展開する際には様々な予想外のことが発生します。

 例えば、アパレル企業が東南アジアに店舗を構える場合、

 ●出店先のショッピングモールが、突然閉鎖されるかもしれません
 ●店長が資金を持ち逃げして、いなくなるかもしれません
 ●外資規制によって、事業そのものが継続できなくなるかもしれません

 このような不確実要素を抱えつつ事業を成功へと導くのは、並大抵のことではありません。すべての不確実要素を回避するための答えが書かれたマニュアルなども、もちろん存在しません。しかし、答えがないからといって、何も計画せず行き当たりばったりで新規事業に取り組めばよいということではありません。

 答えがないからこそ、少しでも成功確率を上げられるようにあらかじめオプション(選択肢)を複数用意して、それぞれを充分に吟味する必要があります。

論理的に考えて正しいオプションを選択する

 環境に合わせて柔軟に変化するためには、常に複数のオプションを用意することを意識しましょう。

 認知心理学者のダニエル・カーネマン氏は『ファスト&スロー―あなたの意思はどのように決まるか?(2011)』の中で、「人間の思考は直感のみで判断するシステム1と、論理的に考えて判断するシステム2の2通りある」と解説しています。

 また、『Bad Moves: How decision making goes wrong, and the ethics of smart drugs(2013)』の著者であるバーバラ・サハキアン氏とジェイミー・ニコール・ラブゼッタ氏によると、人間は毎日3万5000回もの判断をしているそうです。

 そして、人間はこの数多くの判断を、システム1で直感的に下しています。

 しかし、重要な局面で判断を誤らないためにも、論理的に考えて判断するシステム2を常に起動できるようにしておきましょう。そのためには、オプションを複数出して、なぜ最終的にその選択をしたのかを、説明できるようにすることが肝心です。

言語化することでシステム2を起動する

 システム2を起動する練習は一人でもできますが、私が推奨するのは、1対1の対話で練習することです。そのポイントは、相手の話を最後まで聞いてから自分の意見を急がず言うようにすることです。

 システム2は、思考スピードを落とさない限り起動されません。ですから、焦って相手の話にかぶせて話し始めてはいけません。

 また、ゆっくりと話すことで思考スピードも落とすことができるので、システム2を起動して深い思考ができるようになります。

 最年少で五冠を獲得した将棋の藤井聡太棋士は、研究中や対局中に形勢判断を言語化することを意識しているそうです。言語化するということは、直感的なシステム1でなんとなく指し手を選ぶのではなく、システム2を起動して指し手を吟味しているということになります。

アジャイル仕事術』では、不確実性の高い世の中で正しい判断をするための手法以外にも、働き方のバージョンアップをするための技術をたくさん紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。