これからの社会に求められる力とは?
星:藤原さんの取り組みが日本の義務教育に与えた影響は計り知れないですね。
教育改革に取り組まれる中で、「いい学校で、いい教育を」という意向があったかと思いますが、何をもって“いい”と捉えるか、何か具体的な基準や設定を意識されていたのでしょうか?
藤原:日本の教育は「正解至上主義」なんです。
でも、私がいたリクルートはそれが通用しない世界でした。
想定外のこと、二律背反の出来事が毎日どころか毎分起こる。
それらに対処していくには、知識や情報の「処理力」だけでは足りません。
必要なのは、自分で仮説をたくさん立て、他者からの仮説も集めつつ、その中から自分が一番納得し、さらに関係者も納得できる解、つまり「納得できる仮説」=「納得解」を導き出す力です。
正解ではなく納得解をクリエイトする「情報の編集力」が大事で、この力をいかに伸ばしていけるか、かなり意識していました。
星:一つの正解を求められる日本の学校教育とは大きく異なりますね。
これまではルール通りに、決められた答えを出していればよかったのですが、それだけでは通用しない社会に日本もなろうとしています。
そんな社会の中で、子どもたちが「正解を出すゲーム」ばかりをやっていては、適応していけませんよね。
藤原:その通りですね。情報処理力ばかり鍛えていると「情報編集力」が育たない。
私は情報処理力のことを「ジグソーパズル型学力」、情報編集力を「レゴ型学力」と呼んでいます。
ジグソーパズルには正解があって、絵柄があるものを崩して正解をはめていく。
ジグソーパズル型学力をいかにつけるかが日本の戦後教育で、要するにジグソーパズルが得意な少年・少女を増産していくことだったんです。
星:非常にイメージしやすいです。
一方、レゴは組み合わせ一つでイマジネーションさえあれば、家から街全体、車や宇宙船など、あらゆるものをつくり出すことができますね。
藤原:はい。とはいえ、私も元々は「ジグソーパズル型」の一人だったと思うんです。それがリクルートで鍛えられ、さまざまな出来事に揉まれることで、「レゴ型」に目覚めていったわけです。
ジグソーパズル型の仕事はAI・ロボットでもできるので、今はまだ人間の仕事として残っていても、おそらく10~15年ほどで、ほぼ一掃されてしまう。
だからこそ、これからはレゴ型の情報編集力を鍛えていこう、会社人間じゃなく会社内個人として目覚めていこう、という発信を私は続けているのです。