子育て中の親の悩みが幸せに変わる「29の言葉」を集めた新刊『子どもが幸せになることば』が、発売直後に連続重版が決まり、注目を集めています。
著者は、共働きで4人の子を育てる医師・臨床心理士で、20年間、5000回以上の面接を通して子育ての悩みに寄り添い続けてきた田中茂樹氏。親が「つい、言ってしまいがちな小言」を「子どもを信じることば」に変換すると、親も子もラクになれるという、心理学に基づいた「言葉がけ」の育児書です。
この記事では、「わが子が発達障害かもしれない」と思ったお母さんお父さんに向けて、ごく基本的な知識をお伝えします。(構成:編集部/今野良介)(初出:2019年4月13日)

わが子が「発達障害かもしれない」と思ったら

私が子育ての悩みに関するカウンセリングでお会いするケースの多くで、発達障害が関係しています。たとえば不登校の相談でも、発達の問題が背景にあったりするのです。

私は発達心理や療育の専門家でありません。発達障害とは何か、それぞれの特徴、症状の解説、親はどう接するべきか、その理由などについて知りたい方は、『子どものための精神医学』(滝川一廣・著/医学書院・刊)や『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(本田秀夫・著/SB新書)などの解説書をおすすめします。

ただし、自分の子どもの気になることがあっても、本やネットの情報、親や友人の言葉に振り回されないように気をつけてください(この記事もまさしく「ネットの情報」です)。かかりつけの小児科医、保育園・幼稚園の先生、小学校であれば担任の先生やスクールカウンセラーに相談して、正しい情報を得るのが大切です。

子どもに関わる仕事をしている人たちは、専門家ですから、この子の問題は専門機関に相談すべきか、この地域であればどこに相談したらよいかなどについて、たくさんの情報を持っています。親として不安に感じている点を正直に相談しましょう。すぐには適切な情報が得られなくても、悩みを相談することにもいろいろな大切な意味があります。

一方、しばしば見聞きする「よくない対応」は次のようなものです。

[1]不安に思っているが、「問題が表面化していないから」「担任の先生から言われてないから」などの理由で、気がついていないふりをする。

親は一番身近にいて、子どもが苦しんでいることに真っ先に気がつく存在です。親が味方になってくれないと、子どもは苦しみます。もし本当に障害があるのなら、早く気がついて対応してあげることで、無用の傷つきを防ぐことができます。

[2]自分の子には障害があるかもしれないと感じているが、子どもの苦手なことや欠点と見えることについて、親の自己流のやり方で(ネットで調べたり、本を読んだりして)克服させようとする。

苦手なことを克服するために「慣れさせる」ことで解決しようとするケースをよく見聞きします。

たとえば、ざわざわした音や人混みが苦手な聴覚過敏の子を「鍛える」ために、無理にそのような環境に耐えさせる。野菜の味が苦手で受けつけない子に、無理やり食べさせたりするなどがそうです。

障害がある子にとっての「苦手」は、本人のわがままや身勝手というレベルではなく、「耐えがたい苦痛」かもしれないのです。いちばん信頼している親から無理強いされることは、心の傷(トラウマ)となる可能性もあります。

3種類の主な発達障害と親の向き合い方

カウンセリングで出会う発達の問題のほとんどは、ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)の3つです。

そして、これらは、互いに重なることもありえます。

順番に、かんたんに説明していきます。

「うちの子、発達障害かも……」と思った親がやってしまいがちなよくない対応2つ【書籍オンライン編集部セレクション】思い悩む前に、ごく基本的な知識を頭に入れておきましょう。Photo: Adobe Stock