家族の死後を納得するまで

西:日本人は無宗教だと言われる割に大多数の人が「あの人は天国にいるんだよ」とか「お盆にあの世から帰ってくる」といった話をすんなり受け入れ、亡くなった人の存在はどこかにあると思っていますよね。一方で、今の問いかけをしたお父さんのように「浄土など存在しない」と思っている人は、家族の死後をどう納得されているんでしょうか。

吉村:先ほどのお父さんの場合は、まだ定まっていない状況ですね。時間をかけて、ご本人が納得していくものなのだと思います。

 ただ、宗派によっては明確な答えがあるでしょう。浄土真宗のお坊さんなら亡くなった瞬間に「極楽浄土に赴かれました」と、教理として断言できる。

 一方で、浄土真宗にも先ほどの私のような対応をされる方もいる。どれほど強い物語があろうと、納得できるかどうかはその人次第。納得へのプロセスを、時間をかけてお手伝いしていきます。

 幸い、私たちには初七日~七七日(四十九日)、百箇日、一周忌、三回忌、七回忌・・・といった追善供養で断続的にかかわる機会があります。時間と営みの重なりとともに、気持ちは少しずつ変化していく。普通の人には難しい「遺族の気持ちを聞ける立場」にある僧侶として、丁寧に支えていきたいと思っています。

浅生鴨(あそう・かも)
作家、広告プランナー。
1971年、神戸市生まれ。たいていのことは苦手。ゲーム、レコード、デザイン、広告、演劇、イベント、放送などさまざまな業界・職種を経た後、現在は執筆活動を中心に、広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手掛けている。主な著書に、『中の人などいない』『アグニオン』『二・二六』(新潮社)、『猫たちの色メガネ』(KADOKAWA)、『伴走者』(講談社)、『どこでもない場所』(左右社)、『だから僕は、ググらない』(大和出版)、『雑文御免』『うっかり失敬』(ネコノス)、近年、同人活動もはじめ『異人と同人』『雨は五分後にやんで』などを展開中。座右の銘は「棚からぼた餅」。最新作は『あざらしのひと』(ネコノス) 、『ぼくらは嘘でつながっている。』(ダイヤモンド社)など。
吉村 昇洋(よしむら・しょうよう)
曹洞宗八屋山普門寺副住職。公認心理師/臨床心理士。相愛大学 非常勤講師。
1977年3月、広島県生まれ。仏教学修士を取得後、永平寺にて修行。その後、臨床心理学修士を取得し、現在は心理臨床家として地元の精神病院に勤務。その傍ら、禅と臨床心理学、マインドフルネス、禅の掃除、精進料理、仏教マンガなど、多岐にわたる分野の研究、執筆、講演を行う。近著に『心とくらしが整う禅の教え』(オレンジページ)、『精進料理考』(春秋社)など。
市原 真(いちはら・しん)
1978年生まれ。医師、博士(医学)。病理専門医・研修指導医、臨床検査管理医、細胞診専門医。Twitter: 病理医ヤンデル (@Dr_yandel)。著書に『Dr.ヤンデルの病院選び ヤムリエの作法』(丸善出版)、『病理医ヤンデル先生の医者・病院・病気のリアル』(だいわ文庫)、『どこからが病気なの?』(ちくまプリマー新書)、『ヤンデル先生のようこそ! 病理医の日常へ 』(清流出版)、『まちカドかがく』(ネコノス)ほか。
たられば(編集者)
古典文学から漫画や政治問題まで、さまざまなツイートで人気を得ており、フォロワー数は20万人を超える。本業は編集者。
西 智弘(にし・ともひろ)
川崎市立井田病院 腫瘍内科 部長。一般社団法人プラスケア代表理事。
2005年北海道大学卒。室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、2007年から川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修。2012年から現職。現在は抗がん剤治療を中心に、緩和ケアチームや在宅診療にも関わる。また一方で、一般社団法人プラスケアを2017年に立ち上げ代表理事に就任。「暮らしの保健室」「社会的処方研究所」の運営を中心に、地域での活動に取り組む。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。著書に『だから、もう眠らせてほしい(晶文社)』『社会的処方(学芸出版社)』などがある。

(※本原稿は、2022年8月20日、21日に開催されたオンライン配信を元に記事化したものです)