中東情勢に関する関係閣僚会議で発言する高市早苗首相 Photo:SANKEI
「4月利上げ」を踏みとどまらせた
サプライチェーンの大規模混乱のリスク
日本銀行は、4月27~28日に開いた金融政策決定会合(MPM)で利上げを見送った。植田和男総裁は会合後の記者会見で、中東情勢を巡る不確実性の高まりを背景に、日銀の経済物価見通しが実現する確度が低下したことを強調した。
市場は、インフレリスクの高まりから、利上げが前倒しになることを見込み、4月上旬の段階で7割方が4月利上げを織り込んでいたが、肩透かしを食らった格好だ。
だが、原油高騰が基調的な物価上昇を加速するリスクと交易条件悪化が景気を下押しするリスクがあるなかで、前回本コラム(2026年3月18日付)で、「ビハインド・ザ・カーブ(利上げが後手に回る)に陥るリスクに注意しながら、景気への悪影響を重視して当面待つ。これが最も可能性の高いシナリオだ」と書いた筆者にとっては、4月利上げの見送りは特段、違和感はない。
ただその後も、日銀の情報発信は相変わらず利上げに前のめりで、金利スワップ(OIS)市場は今回も、次回6月決定会合での利上げを8割方織り込んでいる。
いったい日銀は利上げするのか、しないのか。ヒントは4月MPMで公表された「展望レポート」(「経済・物価情勢の展望〈2026年4月〉」)にある。
概要が記述された後の2ページ脚注に、「今回の展望レポートの中心的な見通しは、足もと不透明な状況となっている中東情勢について、今後、その影響が和らぐもとで、原油価格が下落し、サプライチェーンの大規模な混乱は生じないことを前提に作成している」とある。
この「サプライチェーンの大規模な混乱」がポイントだ。
つまり原油やナフサといった原料調達が困難化し、製造業の生命線である供給網が寸断されるようなことになれば、幅広い業種の生産活動が停滞し、日本経済に甚大な影響を及ぼすことになる。
そうならないことを前提にしていると、展望レポートでわざわざ断っているということは、裏を返せばそうしたリスクを日銀が意識していることを示している。
さらに言うと、そもそも日銀はそうしたリスクをメインシナリオに置くことができない。地震や金融市場で起きる○○ショックと同じで、予測が困難なことに加え、事前にそれを想定し政策対応を行えば、そのこと自体が市場に余計な思惑や混乱を起こさせることになる。
しかし一方で、中東情勢の悪化で物価上振れ圧力が強まり、ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクが高まっているのも事実だ。サプライチェーンが寸断されるリスクが解消に向かえば、即座に利上げを行う必要がある。
こうした事情から、いつでも利上げに踏み切れるコミュニケーションをとりながら供給網を巡るリスクが軽減するのを待つ、というのが今の日銀にできる対応であり、4月の利上げ見送りが、それまでの日銀の利上げに前のめりの情報発信とズレて感じられたのはこのためだろう。
したがって、日銀は供給網が大混乱するリスクが軽減したと判断すれば、6月15~16日に開かれる次のMPMで利上げする見通しだ。
そのサプライチェーンが混乱に陥るリスクはどの程度、深刻なのか。その鍵となる原油調達不安の動向をはかるバロメーターが原油備蓄量の今後だ。







