高齢者の「低栄養」が隠れた健康問題になっている。年齢を重ねて食が細くなり、料理も面倒になると、気づかぬうちに「栄養のある食事」が難しくなることが要因だ。冷凍食品などを活用しつつ、簡単な調理で栄養をとる方法を管理栄養士の塩野崎淳子さんに聞いた。(清談社 吉岡 暁)
高齢者が陥りがちな
「隠れ低栄養」に要注意
「年をとったら痩せても仕方がない、とはよく聞く話ですが、実は「痩せ」が要介護のリスクを高めることが、近年明らかになってきました。年齢を重ねると食事量が低下する方がいらっしゃいますが、その要因を探ると、いろいろな背景が見えてきます。消化吸収機能の衰えだけでなく、足腰や弱って長時間キッチンに立ち料理をすることが困難になる、リウマチなどで手指がこわばり包丁を握るのが難しいなど、いろいろな要因が重なって食事量が低下している方が少なくありません。また、三食それなりに食べているつもりでも、栄養の偏りによって低栄養状態に陥っている方もいらっしゃいます。」
そう話すのは『70歳からは超シンプル調理で栄養がとれる食事に変える!』(すばる舎)の著者で、管理栄養士の塩野崎淳子氏(崎の文字は正しくは“たつさき”)だ。
介護予防教室の講師も務める塩野崎氏によると、年齢を重ねるにつれて食欲の減退や料理ができなくなることで食事摂取量が低下し「隠れ低栄養状態」に陥り、筋肉がやせ細っていく。さらに栄養不足で体力や感染症に対する抵抗力が低下し、肺炎や感染症がなかなか治らないなど、最悪の場合、命に関わる問題となるという。しかし、栄養を満たした食事をとり続けるのは意外と難しい。
「調理をするのが仕事と言える私でも、冷蔵庫にたくさんの食材があるにもかかわらず、仕事で疲れて夕食をつくることができなかったことが度々あります。子どもたちにはゆでておいたブロッコリーとウインナーと白いご飯、ふりかけで済ませたことがありましたが、子どもたちは喜んで食べていたので、そこそこ必要な栄養が取れるなら手抜きだっていいじゃないかと思いました」
そんな体験から塩野崎さんが提唱する「超シンプル調理」は、限られた時間や予算の中で、手抜きをしつつ栄養をバランスよく取ることをモットーにしている。
「まずは『上手に料理する』ではなく『上手に栄養を取る』と捉え、『たんぱく源+野菜+主食』という方程式を基本に一食分を考えるようにします。たんぱく源とは肉や魚などたんぱく質を含む食材。練り製品や魚の缶詰などもたんぱく質が豊富です。野菜はビタミン類が豊富な緑黄色野菜を積極的に。あとはエネルギー源となる米、パンなどの主食。この三つをベースにします。それぞれの食材が一種類のみでも大丈夫。まずはこの三つをそろえることで、栄養バランスが整います」
この方程式にのっとれば、例えばトースト、ゆで卵、ミニトマトのシンプルな朝食も「バランスのとれた」一食になる。まずはポイントを押さえて献立を組むことで、バランスよく食べることが大切だ。