職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
メールにも「タイプ」がある
あなたは、メールでの「雑談」に反応していますか?
たとえば、後輩からこんなメールを受け取ったら、どんな返信をしますか?
「先日はランチをご馳走さまでした。お気に入りのお店に連れて行っていただけて、すごく嬉しかったです。入社時の失敗エピソードも、とても参考になりました。」
ちょっと考えてみてください。
ここで1つの判断軸を示しますが、あなたは「ソーシャルスタイル」を知っているでしょうか。
ソーシャルスタイルとは、アメリカの産業心理学者であるデビッド・メリル氏が提唱するコミュニケーション理論のことです。
人のコミュニケーションスタイルを「感情」と「自己主張」の2軸によって4つに分類します。それにより、
● ドライバー(行動派)
● アナリティカル(思考派)
● エクスプレッシブ(感覚派)
● エミアブル(協調派)
という4つに分けられて、営業や接客向けの研修などに活用されています。
自分のタイプを知り、さらに顧客のタイプがわかると、対応がスムーズになるのです。コミュニケーションの仕方の違いによる無用なストレスも避けやすくなります。
それぞれのタイプによって、メールにも特徴があります。
タイプ別の「すれ違い」
先ほどのメール文章のように、「嬉しい」というような感情表現が入っていたら、「エクスプレッシブ(感覚派)」か「エミアブル(協調派)」の可能性大です。
ところが、こうした後輩からのメールに返信しない先輩たちは結構います。
彼らは、「ドライバー(行動派)」か「アナリティカル(思考派)」なのでしょう。
返事が来ないため後輩は、「失礼だったのかも……」と悩んだりします。
一方で、丁寧には丁寧で返そうと、やりすぎる人もいます。
「またランチに行こう! 次はイタリアンはどう? じつは新しくできた店があって……」
などと、相手より長い文章で返したりしてしまうのです。
すると、それを読んだ新人がまた返信してくるという、めんどくさいループが生まれがちです。
何にでも、ほどほどがあります。
「私の経験が参考になってよかったです。」
くらいの短い反応が、相手の負担にもなりません。
ここまで読んで、「そこまで気をつかうの?」と感じる人もいると思います。
しかし対面のつながりが希薄になっている今は、これまでより意識して「反応」することが、相手を尊重するための基本の気づかいだと思うのです。
「仕事と無関係のこと」を書いてみよう
続いて、あなたからの雑談が、相手にとってありがたい気づかいになる例を紹介します。
「会社とのやりとりは『チャット』、オンライン会議も『聞くだけ参加』。
気づいたら、今日話した言葉はコンビニでの『PayPayでお願いします』だけだった。」
と、一人暮らしの友人が、リモートワークの日々をこんなふうに表現していました。
そんなときに彼に届いたのが、
「今朝の雨には驚きましたね。そちらはいかがでしたか?」
という、仕事とは関係のない一文からはじまるメールで、彼はそれが嬉しくて雨にすら感謝したというのです。
合理的に仕事を進める人はメールも簡潔です。
ただ、リモート中心の職場にいるならば、少しだけメールに「雑談感」をプラスしてみましょう。
といっても、「ゆるい」一文を添えるだけです。
会議でも、入室と退室のときに世間話をするのと同じく、メールの最初か最後がおすすめです。
「ありがとう」を加えると、読後に優しい余韻が残ります。
緊急や深刻なメールでないかぎり、ほんの「一文」を誰も嫌だと思いません。こんな気づかいも、相手の尊重につながります。