当時、ディズニーは、ある航空隊将校に心酔していた。映画の冒頭は、その航空隊の将校への献辞で始まる。

「私たちは、常に先見の明と勇気を持った人によって、困難から抜け出す道を示してもらい、救われてきた。その男は、現在の日本との死闘を予見していた。彼は必死になって私たちを目覚めさせ、問題に備えようとしていた。しかし、無視され、嘲笑されてきたのだ。その男の名は、ウィリアム・ミッチェル将軍である」

 なんとディズニーは、ウィリアム・ミッチェルの信奉者だったのだ。ディズニーは、開戦後にミッチェルの存在を知り、その航空戦略に感銘を受けた。映画には、生前のミッチェル本人の演説が差し込まれている。

「今日の戦争は、第一次世界大戦とは大きく異なっている。今、空軍力は、軍の作戦において、主要な戦力になっている。敵の中枢に直接飛ぶことができるのは、空軍力だけである。敵の戦力を奪い、都市を破壊することができるのだ」

 ディズニーは熱烈な愛国者であり、ミッチェルの戦略を広く知らせることが戦争の勝利に結びつくと考え、採算を度外視して映画を企画したのだった。

 アメリカ陸軍航空軍自体も、戦争期間中、人員のリクルートと予算獲得のため、盛んに広報活動を行っていた。プロパガンダニュースも数多く制作している。アメリカ国内で、日本本土空爆への期待が日に日に高まる土壌を作っていたのだ。