「日本で大量解雇はない」は油断大敵、キャリアを見失う前にすべき自己分析法写真はイメージです Photo:PIXTA

2022年冬から、米IT大手でリストラの動きが加速しています。コロナ特需の終わりや景気後退の懸念などを理由に、米グーグルの親会社アルファベットが約1万2000人、アマゾンが約1万8000人、メタが約1万1000人、マイクロソフトが約1万人、ツイッターが約3700人と、次々と大規模な人員削減を明らかにしています(2023年1月時点)。こうしたリストラ劇は米国では珍しいことではありませんが、ジョブ型雇用の導入が進む日本でも、今後同じような状況が起こり得るのでしょうか。(グロービス・デジタル・プラットフォーム マネージャー 太田昂志)

「日本で大量解雇はない」は油断大敵
日本にも浸透しつつある“ジョブ型雇用”とは

 米国での大量解雇は、日本で働くビジネスパーソンにとって「対岸の火事」なのでしょうか。実は、そうとも言い切れません。大量解雇の前提となっている雇用の在り方「ジョブ型雇用」が、日本でも浸透しつつあるからです。

「ジョブ型雇用」とは、企業が職務内容を明確に定義し、従業員と雇用契約を結ぶ雇用形態のことをいいます。近年、日立製作所、富士通、NTTなどの一部の大手企業ではジョブ型雇用への切り替えが進んでいます。政府も2023年6月までに、ジョブ型の職務給中心の給与体系への移行を促す指針を策定することを表明しており、今後、日本にもジョブ型雇用が普及していくことでしょう。

 ジョブ型雇用の導入が進めば、被雇用者はさまざまなメリットを得ることができます。雇用時に勤務地や勤務時間、報酬などの条件が明確に定義されるため、転勤や異動などはありません。また、年齢や勤続年数に左右されず、スキルや専門性に基づいた報酬を得ることも期待できます。

 一方で、ジョブ型雇用にもマイナス面が存在します。ジョブ型雇用では、業務遂行に必要なスキルや専門性が備わっていることが前提になります。したがって、雇用される段階で、企業の求めるレベルに達していなければ仕事を得ることはできません。

 また、ジョブ型雇用は、いわば「仕事に人を充てる雇用形態」です。つまり、その仕事がなくなれば、基本的には雇用契約も終わります。反対に、現在日本企業で一般的な雇用は「メンバーシップ型雇用」といい、職務が制限されていません。そのため経営環境が悪化したとしても、会社の中に何らかの仕事があれば配置転換が可能なのです。

 今回の米IT大手の大量リストラは、事業の再編成によって一部の仕事が廃止され、それに応じて雇用契約が終了となり起こったといえるでしょう。

 では、ジョブ型雇用制度への転換によって、今後日本でも簡単に解雇できるようになるのでしょうか。