<採用側>人柄、スキル、良質な素地など
<応募側>給与、企業体質、良質な企業評価(将来性・安定性)、ワークライフバランスなど

 採用活動ではこうした互いの要求事項のすり合わせを行い、互いにスクリーニングをし、最終的にすり合わせて合意する。だが、要求事項は明確ではあるものの、スクリーニングの段階・すり合わせの段階で、情報の見極めにブレが生じてしまい、ミスマッチが起こるケースが多い。

 採用側から見れば“人柄”や“将来性”などの定性的情報から応募者の見極めに苦慮することが想像され、そのためにも応募者とのコミュニケーションの中で定性的情報を深く収集し、応募者を見極めなければならない。

 そして、応募側も、給与や財務の健全性などの定量的な情報の判断は比較的容易だが、企業体質などの定性的情報は、企業の口コミサイトに加え、採用側(あるいは大学OBなど)とのコミュニケーションの中で見極めることになろう。

 では、こうした定性的な情報を、双方のコミュニケーションを通じて、どう見極めればよいのか。

 実はここに諜報(ちょうほう)活動との共通点がある。

 諜報活動におけるHUMINT(Human Intelligence)では、人的情報源=協力者から情報収集を行う。

 例えば、突飛なケースではあるが、諜報活動を行う私に対し、「台湾有事における中国人民解放軍の思考の理解に資する情報を収集せよ」と下命がくれば、私はその情報要求に対し、当該情報を保有しうる協力者から情報提供を受けるよう尽力するのだ。

 この際、私と協力者の間に強固な信頼関係があるのが前提であり、その前提のもとでコミュニケーションをもって、協力者から情報要求に対する定性的な情報(時には定量的な情報を含む統計などもあるだろう)を受領し、私は情報要求の定義に沿った分析・評価を行い、Information(ただの情報)をIntelligence(下命元の判断に資する示唆)に変換し、下命元に対し、情報要求事項を含むIntelligenceを納める。

 ただし、協力者に対し、直接的に「台湾有事における中国人民解放軍の思考の理解に資する情報をください」とお願いしても、「そんな情報はない」などと冷たくあしらわれたり、人によってはあまりに直接的すぎて不快感さえ覚えるだろう。そうすると、私と協力者との信頼関係に亀裂が入ってしまう。

 そこで、情報要求の定義に沿った情報を収集すべく、効率的かつ円滑で“真”に迫るコミュニケーションを行い、情報を収集するのだ。

 採用活動においても、採用側と応募側双方で、互いの要求事項に沿ったコミュニケーションを行い、互いに要求事項に対する回答となる情報を収集し、要求事項の定義に沿った分析・評価を行い、判断を下すべきなのだ。

 以降、諜報活動において私が使用してきた諜報心理を利用し、特に採用側でどのようにコミュニケーションをとるべきか、採用活動の一助になることを期待し、解説する。