職場でもプライベートでも、人間関係に悩む人は多い。一方で、「なぜ、あの人は誰とでもうまくやれるのか?」と人間関係を上手にこなす人もいる。『慕われる人の習慣』(レス・ギブリン著 弓場隆訳)は人に慕われる技術をシンプルにまとめた「人間関係の黄金律」として読みつがれている本だ。『メンタルダウンで地獄を見た元エリート自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』の著者でTwitterフォロワー数15万人超えの人気会社員のわびさんに『慕われる人の習慣』の内容とご自身の経験をふまえて「出会いと別れの挨拶」や「熱意を伝える」時のポイントを聞いた。
出会いと別れの賞味期限は長い
――『慕われる人の習慣』では「良い人間関係をつくる最高の極意」として「挨拶をする前にほほえむこと」が紹介されています。わびさんもご著書のなかで挨拶は「礼儀以上の3つの効果がある」として「挨拶は最強のライフハック」と語られていました。
これからは、別れと新しい出会いの季節になりますが、日常の挨拶のほかに、「もう会えないかもしれない人との挨拶」や「初対面の人との挨拶」でわびさんが意識されていることなどありますでしょうか。
自衛隊は人の入れ替わりが激しい組織です。幹部自衛官は2年に1回のペースで異動があり、別れと出会いが日常でした。
そのような世界にいて気づいたことは、別れや出会いの挨拶の印象の賞味期限はかなり長いことです。
別れの挨拶は、その人との最後のやりとりになります。経験上、今までどんなに良い印象を持っていても、別れの挨拶が良くないと悪い印象になりがちで、次に会う時までずっと続くことが多かったです。
なので、別れの挨拶は、どんなに忙しくてもしっかりと時間をとって、丁寧に接するように心がけていました。
初対面の人との挨拶もとても印象に残ります。
第一印象は「目から入ってくる情報」がとても大事と言われますが、本当にその通りだと思います。
そして、第一印象は、よほどのことがない限り変わることはありません。
なので、初対面の人との挨拶のときは、身だしなみや立ち振る舞いには気をつけていました。
相手の自尊心を高めるためにやるべきこと
――『慕われる人の習慣』では「相手に重要感を持たせ、自尊心を高める」ことが人間関係のカギであると紹介されています。メンタルダウンをご経験されたわびさんは、「自己肯定感」が低くなることで大変苦しい期間を過ごされたとご著書を読んで感じました。
それゆえに、自尊心を高めることの大切さも強く感じていらっしゃるのではないかと思います。ご自身の経験をふまえ、わびさんが「相手の自尊心を高める」ために意識していることや、簡単なコツなどがありましたら、ぜひ教えていただけますと幸いです。
たくさん傷ついた経験から相手の自尊心を傷つけないことについては、わかっているつもりです。
その経験から、「相手の自尊心を高める」ことも何となくわかります。
経験上、最も自尊心が傷つくのは、否定され続けることだと思います。
何をしても怒られ、自分の大切なものを否定される。メンタルダウンする直前の私は、仕事では何をしても怒鳴られ、妻が作ってくれた弁当にケチをつけられ、子どもの名前も馬鹿にするなど、否定され続ける日々でした。
その時の自尊心はボロボロでした。相手の自尊心を傷つけないためには、むやみに否定しないことだと思っています。
この経験から、相手の自尊心を高めるには、肯定することがいちばんだと思っています。
「相手の自尊心を傷つけない」ことが、結果的に「相手の自尊心を高める」ことにつながると思っています。
熱意を伝えるには「タイミング」が重要
――わびさんのご著書のなかに「何を言うか」より「誰が言うか」という項目がありました。
『慕われる人の習慣』にも「第三者のテクニック」という項目があります。一方で「それで、あなたの意見はどうなの?」と聞かれる場面もあるように思います。
第三者の意見とのバランスをうまくとり、自分の意見や熱意を伝えるコツなどはありますか。
自分の意見や熱意を伝えるのは、とても難しいです。特に仕事上でのことなら、なおさらだと思います。
下手に自分の意見や熱意を伝えてしまうと、かえって逆効果になることも少なくありません。
私は意見や熱意を伝えるコツは、「タイミング」だと思っています。つまり、仕事のときは求められたときだけに自分の意見や熱意を伝えたほうがいいと思っています。
私も少し上の立場で働くようになってわかったのですが、こちらが求めていないときに意見や熱意を伝えられると、取り扱いに困ります。
これが逆効果になる原因です。なので、仕事で自分の意見や熱意を伝えるのは求められたときにしたほうがいいと思います。
あと、仕事のときでも例外として聞きやすいのは、休憩や食事、飲み会のときになんとなく伝えられると、すんなり入ってきて印象に残りやすいです。
航空業界で働く危機管理屋
某国立大学卒業後、陸上自衛隊幹部候補生学校に入隊。高射特科大隊で小隊長になり、その後、師団司令部や方面総監部で勤務。入隊後10年間は順風満帆だったが、早朝から深夜までの激務と上司によるパワハラが重なり、メンタルダウン。第一線からの異動を経て、「出世ばかりが人生ではない」「人に認められるためではなく、もっと楽しく生きたい」と思い、市役所に転職。激務だった自衛隊時代に比べると天国のような場所だったが、自らの成長の機会を得るため、転職後1年半で航空業界にキャリアチェンジ。給料は市役所時代の倍に跳ね上がった。自衛隊などの社会人経験で身につけたメンタルコントロール術、仕事や人間関係に対する向き合い方などを中心にツイッターで発信を開始。普通の会社員にもかかわらず、開始して2年でフォロワー数が8万人を突破。ツイートはネットニュースなどにも取り上げられ、人気を博している。2023年3月現在、Twitterフォロワーは15万人。『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』が初の著書。Twitter:@Japanese_hare(イラスト:死後くん)