経営破綻したリーマン・ブラザーズのアジア・太平洋部門を買収した野村ホールディングスが、旧リーマン日本法人の社員の一部を解雇する方針を固めたことが、本誌の取材でわかった。

 野村が解雇を決めたのは、旧日本法人の20人前後。日本法人の債券セールス部門を中心に、日本国内で債券業務に携わる社員が対象となっている。

 今回のリーマン買収において野村は、リーマンの不動産や有価証券といった資産や負債は引き継がず、「人材」に絞った買収であることを強調してきた。

 そのため、買収を決めてすぐに日本法人の社員全員に対して雇用の維持を約束。昨年と同水準の報酬も合わせて確約していた。

 そうした野村の姿勢を受け、10月14日に日本法人の人材の継承を完了した時点で、大半の社員が野村に残る意思表示を示し、すでに業務も開始している。

 ところがである。それからわずか1ヵ月しか経っていないにもかかわらず、野村が人員整理に踏み切る意向を固めたのは、「国内であれば野村も債券業務は強く、人員は足りている」(野村関係者)と判断したため。

 野村の人員が十分ではないアジアやオーストラリアでは、旧リーマンの社員をそのまま継承。事業もこれまで通りの形で再開しているが、国内に関しては、「重複する人員は必要ない」(同)というわけだ。

 加えて債券市場の低迷がある。米国発の金融危機に伴って、債券部門が取り扱っていた社債や証券化商品の市場は、売買が成立しないほどの収縮ぶり。「売る商品が全くなく、まさに開店休業状態」(金融関係者)で、これ以上の社員は要らないといった事情もあった。

 だが、これだけで収まりそうもない。関係者によれば、債券のセールス部門だけでなく、「今後、債券のトレーディング部門などの社員もリストラされる可能性が高い」といい、「さらに解雇される人数は膨らむだろう」(関係者)とみられている。

 そのほか野村は、日本における為替部門やIT部門の社員を、シンガポールやインド、そして香港などに再配置する意向も持っていると言われており、今後、各部門の整理・統合も活発化しそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 池田光史)