現役・安全志向が高まるばかりの大学受験。妥協した大学に進学する高3生も多いはず。だが、ちょっと待ってほしい。現在、仮面浪人する人が増えているのだ。とはいえ、浪人によって成績がどれだけ伸びるのか分からず、もう1年頑張るべきか悩むだろう。そこで、特集『資格・大学・大学院で自分の価値を上げる! 学び直し“裏ワザ”大全』(全11回)の#1では、大手予備校の浪人生コースの偏差値上昇値の内部データを初公開。1浪後に合格が見込める大学の卒業者の年収データと組み合わせ、浪人の費用対効果を明らかにすることで、時代の流れに逆らった「浪人のすゝめ」を示す。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
※2022年2月28日に公開した有料会員向け記事を、期間限定で無料公開!肩書や数字を含む全ての内容は取材当時のままです
受験生の安全志向と少子化で
「浪人回避」が加速するも…
なぜ、時代の流れにあえて逆行してでも「浪人のすヽめ」なのか?その理由を明かす前に、まず大学受験を取り巻く現状から押さえよう。
現在の大学受験は、浪人どころか「現役志向」が加速している。2007年度の「大学入試センター試験」では2割を超えていた高卒生、いわゆる浪人生の受験比率が徐々に下がり、22年度はとうとう15%を割り込んだ。
一方、1月に判明した21年度の大学への進学率はというと、前年度から0.5ポイント上昇となる54.9%と、過去最高を更新している。なぜ大学進学率は高まっているにもかかわらず、浪人生比率が下がっているのか?
短期的な要因としては、まず21年度以降、大学入試センター試験から「大学入学共通テスト」に切り替わったことで、現役生が有利になり、浪人を避ける動きが一気に加速したこと。同時に、16年以降、私立大学の定員厳格化が始まり、浪人回避の「安全志向」が強まったことが挙げられる。さらには、総合型選抜や推薦入試の拡大など入試方式の多様化も理由に挙げられよう。
加えて、中長期的な要因としては、少子化と大学数の増加がある。1992年には205万人いた18歳人口が、21年には115万人へと著しく減少。その間、4年制大学の数はおよそ500校から800校に急増した。21年度の私立大学の入学定員充足率が89年の調査開始から初めて100%を割り込み、妥協すれば誰でもどこかの大学に入れるのだ。
さて、この「大学全入時代」にあって、「不本意な大学に入学するぐらいなら」という条件付きで浪人を勧める理由は、編集部の試算では、妥協して第1志望でない大学に行くよりも、浪人してより難関の大学に入る方が、卒業後の長い人生を考えるとお得になる可能性が大きいからだ。
当然ながら「浪人しても成績がどれだけ伸びるのか分からない」という不安があるに違いない。また、予備校費用など浪人のコストへの懸念もあるだろう。
そこで、次ページから、その不安を解消するべく、現役時から1浪後にどれだけ偏差値が上昇するのか、河合塾の内部データに基づく平均上昇値を初公開。1浪後に期待できる偏差値で、チャレンジできる大学がどれほど変わるのか明らかにする。
その上で、1浪後に入学が期待できる大学の卒業者の推定年収から、浪人のコストがそれに見合うのかについても算定した。
目下、大学受験予備校、河合塾の浪人生向けコースにおける「仮面浪人」の割合が、従来の2割から3割へと急上昇しているという。そんな「後悔先に立たず」になる前に、もう1年、受験勉強の「学び直し」をすべきか否かを考える一助となるはずだ。