日東駒専&産近甲龍#1

近年、難化が指摘される日東駒専と産近甲龍。実は、今の受験生の親世代が大学受験に挑んだ1990年前後も、「中堅私大への合格が最も厳しかった時代」だった。そして、2022年度入試ではさらに志願者の増加が見込まれている。特集『MARCH・関関同立に下克上なるか!?日東駒専&産近甲龍』(全19回)の#1では、「その大学の総合的なパワーを測る最大の指標」である一般入試の志願者数ランキングを90年から最新の数字まで振り返ることで、日東駒専・産近甲龍を含めた全国の私大の隆盛と狙い目を追う。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

時代は違えど…現受験生と親世代で重なる
中堅私大グループへのイメージ

 現在、大学受験生の子どもを持つ親世代の中には、原秀則氏の漫画『冬物語』(小学館)を覚えている人も多いだろう。1987~90年に連載され、小学館漫画賞を受賞し、実写映画にもなった作品だ。

 浪人生の苦悩と恋愛を描いた異色の作品で、漫画では珍しく東京大学や早慶(早稲田大学、慶應義塾大学)、日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)など大半の大学が実際の名称で登場する。そのストーリーを簡単に言えば、現役生時代から日東駒専に憧れていた男性主人公が仮面浪人を含めた2浪の末に、専修大に補欠ながら合格を果たす、というものだ。

原秀則氏の漫画『冬物語』(小学館)©原秀則/小学館

 冬物語の連載は、現受験生の親世代、つまり団塊ジュニア世代の大学受験を経験した時期とほぼ一致する。大学進学率はその頃から急激な右肩上がりを始めた。

「90年前後は、日本の大学入試が最も厳しくなった時代で、それまで相対的に入りやすかった日東駒専・産近甲龍(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)が一気に難化した。その記憶からわが子がその大学グループを志望しても『簡単に受かるわけがない』と思う親は多い」と、河合塾教育研究開発本部の近藤治主席研究員は言う。

 その親世代と比べて、現在の大学受験を取り巻く状況は様変わりした。18歳人口が大きく減少する一方で大学進学率は跳ね上がり、4年制大学の数は親世代の受験時代のおよそ500校から800校近くへと増加した。

 そして、今秋、日本私立学校振興・共済事業団が発表したように、2021年度の私立大学の入学定員充足率が89年の調査開始から初めて100%を下回り、本格的な大学全入時代に突入した。定員割れの4年制私大の数も前年度から93校増え、全体のほぼ半数の277校に及んでいる。

 この状況にあって、日東駒専・産近甲龍のブランド力は親世代よりも低下したのか?その答えは否だ。今後、18歳人口の減少によって定員割れする大学の増加が見込まれる中、「現受験生のボリュームゾーンにとって、日本人の大半が知るようなネームバリューを持つ日東駒専・産近甲龍は、親世代と同じく、かなりの憧れ大学に位置付けられている」(近藤氏)からだ。

「大学全入時代を迎え、今後も18歳人口が減り続ける中、10年後、20年後には、日東駒専・産近甲龍あたりが、学業で努力した証しという意味での『学歴』と見なされる大学のボーダーラインになっていても不思議ではない」と、別の予備校幹部は予測する。

 そんな日東駒専・産近甲龍の22年度入試はどうなるのか?

 次ページから、早慶上理(上智大学、東京理科大学)・MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)・関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)などの志願動向と併せ詳しく見ていく。

 さらに、90年からの私大一般入試における志願者数ベスト20ランキングも掲載。最新動向と歴史の両面から、狙い目の大学を探っていく。