お金持ちになれば選択に迷うことは減る

 合理的に考えれば、リンゴとミカンのトレードオフを軽減する賢い方法は、同じ悩みを抱えている買い物客を見つけて、一方がリンゴを、もう一方がミカンを買ったうえで、それを半分ずつ分け合うことだ。これで当初の望みどおり、リンゴとミカンを両方食べることができる。

 しかし、それよりずっと簡単で効果的な方法がある。それは、財布に200円入れて買い物に行くことだ。これで資源制約は解消し、選択の必要もなくなる。

 ここから、次の身も蓋もない原則が導ける。

選択を避けるもっともシンプルな戦略はお金持ちになること

 もちろん、「億万長者でなければ幸福になれない」などといいたいわけではない。だが家計に余裕があれば、スーパーマーケットの食品売り場で値札をいちいち確認して財布の中身(今月の食費)と相談することもなく、食べたいものを買い物かごに入れ、さっさと精算して店を出ることができる。これだけでも日々の幸福度は確実に上がるはずだ。

橘玲(たちばな・あきら)
作家
2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)など。最新刊は『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)。毎週木曜日にメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」を配信。