「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ”と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!

選択が少ないほど人生はゆたかになる。選択を避けるもっともシンプルな戦略はお金持ちになることイラスト:tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)

いつも選択に追われていると、人生の幸福度は大きく下がってしまう

 選択という行為は、つねに2つのコスト(費用)を発生させる。

 ひとつは認知能力を消費すること、すなわち処理コストだ。脳は大量のエネルギーを消費する臓器なので、デフォルトは「できるだけ考えない」ように設定されている。選択するためにはこの設定を意識的に切り替えなくてはならず、そのたびに処理コストが発生する。多くのトレードオフに直面し、つねに選択していると、脳は疲れ果ててしまうのだ。

 もうひとつは、「なにかを選べばなにかを失うこと」で、これは機会費用と呼ばれる。財布に100円しかないという資源制約下では、リンゴを選べばミカンを食べる機会を失ってしまう(あるいはその逆)。

 このようにトレードオフでは、つねに機会費用が発生する。「よい選択」とは処理コストと機会費用を最小化することで、選択のコストをゼロにすることは原理的に不可能だ。

 このように考えると、成功にとって重要な原則が導き出せる。

選択をする必要が少なければ少ないほど、人生はよりゆたかになる

 選択のコスト(処理コストと機会費用)が減ればリターンはその分だけ増えるのだから、これは当たり前の話でもある。そのリターン(資源)をより重要な選択に投じることで、社会的・経済的に成功し、人生はよりゆたかになる。逆に、いつも選択に追われていると、人生の幸福度は大きく下がってしまうだろう。