幸福を3つの資本で定義し、話題となった前著『幸福の「資本」論』からパワーアップし、さらに“合理性”を加えて、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。「合理性」こそ最強の成功法則である、と語る橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!

幸福とはなにか? 幸福度は「親ガチャ」で決まるイラスト:chanwity / PIXTA(ピクスタ)

「幸福」とはなにか?

「幸福に生きるにはどうすればいいのか?」という問いに答えるためには、「幸福とはなにか?」を定義しなければならない。これには哲学、心理学、宗教学などの膨大な議論があり、それに在野の知識人や素人が加わって百家争鳴の状態になっている。

 ところがここに、脳科学・遺伝学からきわめて有力な説が、実験によるエビデンス(証拠)とともに現われた。それは次の2つにまとめられる。

① 幸福感には一人ひとりちがいがあり、それはおおよそ生得的に(遺伝+幼少期の環境で)決まっている。
② よいことがあれば幸福度は上がり、悲しいことがあれば幸福度は下がるが、長期的には、生まれもった幸福度に収斂していく。

幸福度は「親ガチャ」で決まる

 これは、「『親ガチャ』によって幸福度が高いひとと低いひとがいる」ということであり、「幸福度の基本的な水準は大人になってからは(ほとんど)変わらない」ということでもある。人間について自然科学(現代の進化論)が明らかにした「不都合な事実」のひとつだが、だからといって絶望する必要はない。なぜなら、幸福とは相対的なものだから。

 わたしたちはつねに、身近なひとと自分の境遇を比較し、喜んだりがっかりしたりしている。これは脳が上方比較を「報酬」、下方比較を「損失」と見なすからで、無意識のうちに、自分より恵まれた者を見ると痛みを感じ、劣った者と出会うと快感を得る。これも自然科学が発見した「不都合な事実」で、これが脳のOS(基本的な仕組み)である以上、仏陀のような偉人でなければ逃れる術はない。

 ただしここには大きな皮肉があって、いい気分になるために自分より劣った者ばかりを集め、自分より優れた者を避けていると、長期的には幸福を破壊してしまう。あなたが会社の経営者だとして、どういうスタッフを集めればいいかを考えてみれば、このことは明らかだろう。