HR分野のDXで理想形に到達するための「二つの領域」と「二つの視点」安斎富太郎・WHI Holdings代表取締役CEOが語るHR分野のDXの理想形とは?

人的資本の情報開示が義務化され、日本企業を取り巻くHR(Human Resources)事情は大きく変化している。日本でのHR分野のDXで、今何が求められているか。企業の人事に必要な次の一手とは。さまざまな企業に人事システムを提供するWHI Holdingsの安斎富太郎代表取締役最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。(取材・文/ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 大根田康介、撮影/加藤昌人)

日本企業は人事業務の“量的改善”より
人的資本の“質的改善”を目指すべきだ

――現在の日本におけるHR分野を取り巻くDX環境をどのように見ていますか。

 日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)では、しばしばデジタルに力点が置かれ、何をトランスフォームするかという視点が抜け落ちています。本来はトランスメーションが趣旨で、その手段がデジタル化という認識が大事です。

 これはHRテクノロジーでも同じで、人事管理のデジタル化で人事の何をどうトランスフォームするのか。その目標設定が必要です。

 それを大前提として、HRテクノロジーについては「二つの領域」と「二つの視点」で考える必要があります。

 一言で人事といっても、その中身は八つの分野に分かれます。「人材採用」「勤怠管理」「人事給与」「諸申請の手続き」「タレントマネジメント」「スキルの教育・研修」「従業員のエンゲージメント」「健康経営」です。日本企業の人事部におけるDXは最初の四つ、いわゆる労務を含めた定型的な人事業務をどう改善するかに主眼が置かれています。これは“量的改善”という領域で、いかに作業負荷を下げて効率的にするかというものです。

 一方、残り四つは非定型的な人的資本に関するものであり、いわゆる“質的改善”という領域になります。企業経営において従業員をどう生かすか。HR分野のDXでは、よりそこにフォーカスすることが重要です。