運送会社の八大が挑む、DX化による経営改革と業界変革運送会社の八大が挑む、DX化による経営改革と業界変革とは?(写真は同社の岩田享也社長)

中小企業の生産性向上と経営課題の解決のためにはデジタルシフト(DX化)が必要と叫ばれて久しいが、まだ取り組み状況には濃淡がある。そんな中、運送会社の八大は先駆的にDX化に取り組んできた。そこには、自社の経営改革と同時に業界変革もしたいという岩田享也社長の思いがあった。(取材・文/ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 大根田康介、撮影/嶺竜一)

「このままでは会社も業界もなくなる」
危機感から業態チェンジとDX化を目指す

 運送会社である八大は1942年、現社長の岩田享也氏の祖父が東京都中央区日本橋人形町で創業した。当時は付近に印刷関係の会社が多かったことから、紙を運ぶのが同社の主な仕事だった。

 岩田社長は、大学在学中から家業を手伝っていた。その中で、説明書や契約の約款といった紙ベースだったものがどんどん減りデジタル化が進む様子を見て、「このままでは仕事がなくなり会社が消える」という危機感を抱いていた。同時に、運送業界の再編が一気に進んでいくと予見。自身が社長を継ぐころには紙の運送を脱却し、スーパーマーケットなどへの冷蔵冷凍食品の運送に業態をシフトチェンジしていった。

運送会社の八大が挑む、DX化による経営改革と業界変革いわた・たかなり/1973年生まれ。専修大学在学中から家業を手伝う。大学卒業後、不動産会社に就職。その後、2014年代表取締役に就任。現在、東京都トラック協会理事、東京商工会議所中央支部青年部幹事長などを務める。

 岩田社長には、「運送業界は利益率が低く、業者数は多いものの発言力が弱い」というじくじたる思いがあった。荷主(顧客)の要望をただ受け入れて、もうからない仕事をこなすだけでは、業界が自然死してしまう。

 そうならないためにも、デジタル化により働き方改革、業務効率化といった世の中の潮流に合わせた経営改革を進め、こちらから荷主にいろいろ提案するなど高いポジションを取れる運送業界に変革させたいという使命感が芽生えた。その中で、DX化がどのような役割を果たしてきたのか。