【チューリヒ】スイス金融最大手UBSグループの会長の元に先週、緊急の電話が入った。相手はスイス当局の幹部3人で、その中身は提案の名を借りた最後通告だった。UBSは経営難に陥った同業大手クレディ・スイス・グループを救済する必要があった。  こうしたことが金融で起きれば、どの国でも緊急事態となる。だがスイスにとってはほとんど存亡に関わる危機に等しかった。何世紀もかけて培われたスイスの経済モデルや国家アイデンティティーは、世界の富を安全に守ることを基盤に成り立っていた。これは銀行だけの問題ではない。スイス自身が救済を必要としていた。