スイス金融最大手UBSグループの会長の元に先週、緊急の電話が入った。相手はスイス当局の幹部3人で、その中身は提案の名を借りた最後通告だった。UBSは経営難に陥った同業大手クレディ・スイス・グループを救済する必要があった。こうしたことが金融で起きれば、どの国でも緊急事態となる。だがスイスにとってはほとんど存亡に関わる危機に等しかった。何世紀もかけて培われたスイスの経済モデルや国家アイデンティティーは、世界の富を安全に守ることを基盤に成り立っていた。これは銀行だけの問題ではない。スイス自身が救済を必要としていた。それは銀行不安が高まり始めて丸一日もたたない3月16日のことだ。クレディ・スイスからは預金が大量に流出していた。創業167年のスイスを代表する金融機関は、数日中に破綻してもおかしくない状態だと思われた。週末まで同行を下支えするため、スイス国立銀行(中央銀行)は500億ドル(約6兆5500億円)余りの資金供給枠を4倍に拡大させようとしていた。米英の規制当局はスイスの規制当局に対し、クレディ・スイスが世界市場を崩壊させないよう求めた。
クレディ救済買収、金融立国スイスにも必要だった
世界の富を安全に守ることを基盤に成り立っていた、スイスの経済モデルと国家アイデンティティーが危機に
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