山口県岩国市「玖西(くせい)地区」での山口県発注土木工事の一般競争入札を巡り、不当な入札排除の疑いが浮上している。地場の大手2社しか実質的に落札できない仕組みとともに、同地区における一部業者だけが甘い汁を吸える構図についても解説する。(東京経済東京本部長 井出豪彦)

土木工事の一般競争入札で
「不当な入札排除」の告発

 山口県岩国市「玖西(くせい)地区」。2006年に岩国市と合併した旧・玖珂(くが)町と旧・周東町をあわせてこう呼ぶ。市西部に位置する人口2万人余りの盆地の集落で、玖珂町には奈良時代に「玖の玉」と「珂の玉」の二霊玉が出現したとの言い伝えがあり、周東町はお酒好きには銘酒「獺祭」(旭酒造)の本社のある所として有名だ。歴史ある自然豊かな土地である。

県建設業協会玖珂支部の「令和3年度収支報告書」県建設業協会玖珂支部の「令和3年度収支報告書」。工事管理費の備考欄には「工事請負業者への還元金」とあり、キックバックの金額が明記されている
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 その玖西地区での山口県発注土木工事の一般競争入札において、地元の建設会社N社から「不当な入札排除が行われている」との告発がもたらされた。地場最大手のA社と二番手のB社しか実質的に落札できない仕組みになっており、N社は昨年9月に県の土木建築部などにも告発状を送っているが、まともに取り合ってもらえないという。

 N社が初めて県岩国土木建築事務所の発注する一般競争入札に参加したのは2021年9月7日のことだった。「令和3年度平原川砂防2工区」など3つの工事で応札した。そのうち1つの工事は予定価格に対し、N社の入札価格が低すぎて辞退となり、A社が落札した(予定価格に対する落札率96.95%)。あとの2つの工事はB社が落札した(同90.86%、93.07%)。

 N社が2年以上さかのぼって24件あった入札を調べてみたところ、県発注土木工事は1件を除いてA社とB社のみで落札していた。残る1件を落札したT社についても「実は積算業務をA社で行うなど、A社と一体的に経営されているA社のグループ会社」(N社社長)だという。