三菱商事が秋田県沖の2海域と千葉県銚子沖で計画されている洋上風力発電の入札で、三菱商事が3件全てを落札したことを巡り、公募した経済産業省・資源エネルギー庁の入札制度や評価に対し、「資本力の勝負となっていいのか」などと疑問の声が上がっている。敗退した企業や業界関係者からの不満に対する経産省の回答に加えて、早くも入札制度そのものを見直そうとする動きを詳報する。(エネルギー政策提言集団スキイ)
洋上風力の入札に敗れた企業から不満!
批判に対する経産省からの回答は?
経済産業省の資源エネルギー庁と国土交通省は、脱炭素を実現する次世代主力電源として洋上風力発電の事業者を決める競争入札を実施し、昨年12月24日、第1弾となる秋田県能代市・三種町・男鹿市沖の48万kw、同県由利本荘市沖の82万kw、千葉県銚子市沖の入札結果を公表した。その結果、下表の通り、三菱商事がライバルを圧倒する価格で3件全てを落札した。
入札の評価はKwh当たりの売電価格と事業実現性をそれぞれ120点満点で評価しているが、価格評価では最も低い入札価格を提示したグループが120点満点だったのに対し、事業性評価では最も高い評価だったグループでも98点にとどまった。価格の優先順位が高いように見えることもあり、「最後は資本力だけの戦いになり入札制度として公平ではないのではないか」との声が敗退した企業から上がっている。また、入札の制度設計の際に「最低入札価格を設置しよう」という議論があったが、価格低下による国民負担の軽減を図りたかった経産省が難色を示したとされる。
今回の入札では三菱商事と組んだ中部電力子会社のシーテック、東京電力と中部電力の合弁会社ジェラ、東電傘下の東京電力リニューアブルパワーの3社が秋田県の入札で別々に応札している。これが「入札制度として不公平ではないか」という意見も公募に応じた企業から出ている。一つの資本から複数のプロポーザルを提案でき、1回の入札から得られる情報に格差が生まれる、との理由からだ。
「どのように算定すればこのような価格が提示できるのか。事業の実現性という定性評価でも高評価を得ている三菱商事のどこが評価されたのか、一定の範囲で内訳を開示すべきではないか」といった声もあった。
次ページでは、敗退した企業や業界関係者からの不満に対する経産省の回答をお届けすると共に、三菱商事による価格破壊が入札制度の見直しを加速させている内実を詳報する。