恋人が難病「ハンチントン病」に、結婚・介護・看取りの15年で夫が悟ったこと写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事を続けながら介護や子育てをするワーキングケアラー、子育てをしながら介護をするダブルケアラーの人たちが研さんした技術は、ビジネスの現場でも生かせる。具体的なケースからその神髄を学んでいこう。第7回は、同棲(どうせい)中の恋人がハンチントン病という難病にかかったが、両親の理解を得て結婚。夫としてたった一人で介護し妻を看取(みと)った男性の事例だ。(ライター・グラフィックデザイナー 旦木瑞穂)

恋人が突然
難病「ハンチントン病」を発症

 九州在住の瀬戸良彦さん(仮名、42歳・現在独身)は、高校卒業後、同窓会で、後の妻となる女性と再会した。ラジオ番組の話で意気投合したことから、二人で食事をしたりドライブをしたりするように。1カ月後には正式に交際をスタートし、1年後には同棲を開始した。

 同棲から1年たった頃、恋人の貧乏ゆすりが激しくなったことに瀬戸さんは気づく。「何か不安や悩みでもあるの?」と声をかけたが、恋人は「特にないよ」と笑った。

 しばらくして、恋人の父親が1年ぶりに二人の家に遊びに来た。父親は、幸せそうに笑う娘の姿に戦慄(せんりつ)する。瀬戸さんが恋人の癖だと思っていた独特な身体の動きや滑舌(かつぜつ)の悪さ、激しい貧乏ゆすりに既視感があったのだ。父親は娘に、大きな病院の受診を促した。