「子どもには、少しでも体によいものを食べさせたい!」ですよね。
でも、ごはんは毎日のこと。なるべくシンプルで簡単に済ませたいものです。
この連載では、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生が、最新の医学データをもとに「子どもが食べるべきもの、避けるべきもの」をご紹介します。
不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験から、本当に子どもの体と脳によい食事がわかります。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。
使用済みのオイルは危険?
オイルは、加熱すると「酸化」します。酸化したオイルを摂ると、カラダの中も酸化します。酸化は老化と言い換えることができ、病気になりやすくなります。
酸化現象は、空気、温度、光が原因で起きます。新鮮なりんごを切ってそのまま置いておくと、切った面がだんだん茶色くなりますね。これはりんごの表面が酸素(と温度)で酸化したからです。また、クギを屋外に雨ざらしで置いておくと、やがてサビていきますが、これも酸化です。
使用済みのオイルは酸化しています。酸化したものを体内に入れると、私たちの細胞も酸化してサビたようになり、病気になりやすくなるということです。
ですから、一度でも使ったオイルは毒同然なので捨てましょう。
子どもでも揚げ物は危険!
一度加熱したオイルを摂ると血管を傷つけて、動脈硬化のもととなります。ひいては心筋梗塞や脳梗塞の原因にもなります[*65]。
から揚げやポテトフライが好きな子も多いと思いますが、たくさん食べていると、カラダの中で活性酸素・フリーラジカル(血管や臓器を傷つける物質)などの酸化による物質が増えて、いわば、酸化したオイルが増えたような状態になります。そして体の中の血管だけでなく、脳もサビてしまうのです。
子どものときから揚げ物ばかり食べていると、小学生でも脂肪肝になったり、30代で脳梗塞になったりする患者さんを実際に診ています。揚げ物は月に1~2回がおすすめです。
子どもも脂肪肝になるの?
脂肪肝は、肝臓の健康な細胞が「脂肪細胞」に置き換わってしまった状態です。脂肪細胞はカラダの中、肝臓の中で温度と時間によって傷み、炎症物質を周りにまき散らします。そして血流に乗って脳にも届いてしまいます。
また、脂肪肝の脂肪を分解してエネルギーとして使うとき(燃やすとき)には、活性酸素という有害物質が発生します。この活性酸素によって「酸化ストレス状態」になり、肝臓の細胞が傷つきます。
実際に脂肪肝の小学生が増えており、放っておくと肝臓がんにもなりかねません[*31]。でも安心してください。バランスのよい食事と運動を心がければ、よくなっていきます。
酸化した油はシミやしわのもとに
皮膚はたんぱく質でできており、温度や光で酸化します。その際に皮膚の細胞を傷つけて、シミやしわを作りだします。みなさん一生懸命、紫外線対策をすると思いますが、シミやしわの原因はそれだけではありません。カラダの中に酸化したオイルを入れてしまうことも、皮膚の老化を進めます。
オイルは可能な範囲でエクストラバージンオリーブオイルなどの新鮮なものを使いましょう。
このほかにも『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの脳と体に最高の食べ方、最悪の食べ方をわかりやすく紹介しています。
(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本』から一部抜粋・編集したものです)
*65 Idris CAC, et al. Effect of Consumption Heated Oils with or without Dietary Cholesterol on the Development of Atherosclerosis. Nutrients. 2018 Oct 17; 10(10):1527.